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第十六局【決勝戦編】

15巡目◉それでもあなたを……

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オーラス   ドラ伍

 カオリは目一杯まで広く取ってまるでマナミのように攻めた手順を採用した。それはミサトも同じであったしシオリやジュンコもまだ当然諦めていなかった。

『さあ、オーラスですがいかがですか小林プロ』
『いやー! 見応えある戦いですね。オーラスは点差からして井川有利というのは間違いないんですが、財前カオリは侮れません。やはり彼女がここで一撃決めてくる気が…… してしまいませんか?』
『確かにそうですね。それに白山も左田も諦める人たちじゃありません。最後まで良い勝負をしてくれるんじゃないでしょうか!』

 オーラスはカオリの手が早かった。

4巡目
カオリ手牌
一二三三四六七八九2333 4ツモ

『財前! テンパイだ。あっという間に張ったー!』

「リーチ」
打三

『なっ!』
『イッツー確定に取りました! 力強い!』

《この待ち取りは伍がドラなだけに価値がある。リャンメンをカンチャンにして不思議ない手です。あくまで自然ですからね! さあ、ここでわたしを引いて勝ちましょう!》

(…………)

カオリ
ツモ七

打七

《どうして!? なぜ引かないんですか?! もう山にないとか?》

(ううん、そうじゃないけど。やっぱり私、能力チカラは使わないでいたいの)

《なっ、優勝がかかってるんですよ?!》

(うん、そうなんだけど…)

 そこへミサトも追いつく。

ミサト手牌
二三四伍伍六七①①②③③④ ⑤ツモ

『井川が追いついた!』

 ミサトは点棒状況を確認した。
(この点差なら…)

ミサト
打①
ダマ

『井川ミサトはダマテンを選択ーー!』
『守備力の高い井川らしい麻雀ですね』

カオリ
ツモ二
(ウッ!)《カオリ。なんで!》
打二

『財前! アガリを逃したー。リャンメンならツモっていた二を河へ捨てるーー!』
『でもそれは井川も同じです! リーチしていれば捕らえていた二をみすみす見逃すことになりました!』

ミサト
ツモ②
「ん…」
『来る順番が悪い! 先ほど②から引けていれば二もダマのままアガれていたものを——』
⑤と安全性を比較して
打②

シオリ
打二

カオリ
ツモ八
(んー、またスジか。さっきから惜しいわね)《のんきなことを言って…… オーラスなんですよ!?》
(うん、womanの言うこともわかるよ。でもやっぱり、私は偶然引いて来たいの)
打八

「!」

『なんと! 同巡内フリテンです! 井川ミサト、役ありの八が出ましたが白山が捨てた二により和了ることが出来ません!!』

ミサト
ツモ中
打中

(偶然に任せても、それでもwoman、あなたを引いてこれたら——)

カオリ
ツモ伍

(こんなに素敵なことって、ないでしょう!?)

「ツモ!!」

《カオリーーーー!!》

一二三四六七八九23334 伍ツモ
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