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第十六局【決勝戦編】
10巡目◉最高打点になる手順
しおりを挟む池袋——
雀荘『ペガサス』にて
「奈央さん、何見てるんすか?」
財前マナミの実の姉である石井奈央はパソコンで師団名人戦を観戦していた。
「師団名人戦決勝」
「へえ、競技麻雀も興味あるんすね」
「私の義理の妹がいま決勝戦に残ってるからね」
「ええっ!!?」
「この子。財前香織」
「めっちゃ美少女!」
「そうなのよ。ちなみに血の繋がった妹もいるけどそっちも美少女雀士よ」
「でも、財前って? リングネームみたいなもんすか?」
「いや、本当は私も財前なの。親が再婚したからね。でも、そのタイミングで私は自立して出てったから面倒くさいし石井のままにしてるだけ。いま父親の姓は財前なのよ」
「えっ、そうなんだ」
「私は財前にはならなくていいわ。それよりも、早く私を『泉』にしてよね、テンマくん!」
「も、もーちょっとお金が溜まったらね…」
「たくう、頼りないんだから!」
————
水戸——
雀荘『ひよこ』にて
「店長、店長! 最終戦ですよ!」
「おお! どうだ、カオリさんは勝てそうか?」
「総合4着目だけど優勝の目はあります。それに、なんだか楽しそう! あの子はきっとやってくれる。諦めてないどころか、ここから逆転するストーリーを考えて楽しんでる。そんな顔してますね」
「なら、きっと勝つだろうね」
「ええ、きっと」
「ミサトさんはどうなんだい?」
「ミサトは総合2位ですね。1.2.3位はダンゴ状態です」
「おーい、終わったよー!」
「はい! ラストありがとうございます——!」
————
日暮里——
雀荘『富士2号店』にて
「いま師団名人戦の決勝やってるよ」とお客さんが教えてくれた。スグルは競技麻雀には疎い。しかし師団名人戦がどのくらい凄い大会かくらいは分かってた。
「カオリちゃんとミサトちゃん2人とも決勝にいるのか。どっち応援しよう」
「オメェの弟子たちは本当にすげえな」
「はい、もはや逆におれが弟子入りしたいくらいですよ! おれの人生で一番自慢できることは彼女たちと過ごした時間です」
————
大勢の人が財前カオリに期待していた。その期待に応えるかのようにカオリの元に勝負手が来る。
親番
カオリ手牌
二六七八⑥⑦⑧5779南南 三ツモ ドラ⑦
『おっ! リャンメンターツが出来てメンピンドラ1の一向聴です財前カオリ!』
『何切りですかね?』
『ピンフ率を高めるなら7でいいですが、もう7巡目で親というのもありますし、ここはオタ風の南か8のスジ引っかけに期待する5切りが私はいいかと…』
『私もそれがいいかな』
カオリ
打9
『打9でした!』
『なるほどメンタンピンまで持っていく方針ですね! 悪くはないけど一萬受けもありますからね、どうなんでしょう』
すると次巡
カオリ
ツモ8
『裏目を引いたーーー!!』
『最速テンパイを逃しました、財前カオリ』
(いや、これはこれで私の予定通りよ。一向聴で裏目を引く。それは唯一の最高打点になる手順!)
打5
そして…
カオリ
ツモ6
「リーチ」
『ななななんと! 最速テンパイを逃すことでしか辿り着かない頂があったとは!!』
『これは私たちを超えて来ましたね』
『いやはや全く』
「ツモ!」
二三六七八⑥⑦⑧678南南 一ツモ
「6000オール」
『おおおおおお!!』
『うわああああ!!』
『すごいすごいすごい!!』
『いや、素晴らしいハネマンです! なかなか出来るものではない!』
カオリはこの一撃で全員と総合点が並んだのだった。
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