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第十伍局【師団名人戦編②】
14巡目◉持ち持ち
しおりを挟む2回戦は流局の多いゲームだった。決して降りているわけではないのが素人とは違うが。先制リーチが入り、それに対応した追っかけリーチが入り2軒をかわしてテンパイを組むもアガれないまま危険牌を引いてさらに迂回しようとするがテンパイ復活せずノーテンというような展開ばかり。誰もアガれず東場は終了。
供託点棒7000点の流れ六本場となった南1局カオリの親番になる。
親番6巡目
カオリ手牌 切り番
二三四②②③⑤⑦455667 ドラ7
(場に①は3枚見え。対面は特殊… 上のチャンタ三色かな? 上家はソーズ染め。④1枚切れ⑤1枚切れか…)
打⑦ダマ
『財前香織③を切りません! 1枚差があるのにすごいですね』
『ピンズ下がいい待ちだと思っているんじゃないですかね。そう考えて止まっただけだと思います』
南家
左田手牌
二三四八八③③⑤⑥⑦678
カオリが意図せず止めた③はジュンコのダマに当たる牌だった。
(リーチするのは違うな)とジュンコは考える。
(アガリがあるのは多分ピンズの下だ。とりあえず寄せよう)とカオリは考えていた。ジュンコのダマへの放銃を回避していたとは気付きもしない。
『そうこうしてるうちに北家の久本さんもテンパイしましたよ!』
北家
久本手牌
②1112224449中中 ②ツモ
「リーチ」
打9
『メンホンをやめて四暗刻に仕上げてきました! 素晴らしい!』
『ピンズ下が良さそうだと読んでたんでしょうね』
『読み通り残した牌を重ねましたアマチュア代表枠を通過した久本』
『さあ、その役満のアガリ牌ですが——』
西家薬袋手牌
八八⑦⑦⑧⑧⑨⑨⑨789中 中ツモ
『重ねたー!』
『出る寸前と思われた中を重ねて薬袋もテンパイです!』
『でもこれ素直に⑨切れますかね?』
『確かに通せる根拠はありませんが、彼は根性の塊みたいな男です。テンパイ取りますよきっと』
「リーチ!」
『リーチかけたあーー!!』
『チャンタも三色も無視して追いかけ! 彼らしいっちゃ彼らしいですね。プロって訳じゃありませんし。見た目の華麗さとか全く気にせずリーチってこと。これのおかげで——』
『ええ、これのおかげで日和って中を落として放銃や手替わりして八を放銃ってパターンがなくなりましたね。今度は逆に左田プロがピンチです!』
「リーチ」
『なな、なんと! 左田ジュンコ! オリをすべきではないと判断したのか!?ここを勝負としてリーチまでかけました!』
『供託多いですからね、この局を取られたらまずいと感じたんじゃないでしょうか。それにしても鋭いな。リーチまでしちゃうんだ』
(最強の敵はカオリちゃんだからね。親番のカオリちゃんを降ろしたい!)左田の考えは既に決勝戦を見据えていた。カオリとの決勝は大変だろうから別の人を連れて行きたい。そう考えてのリーチだったのだ。
親番
カオリ手牌
二三四②②③⑤455667 ③ツモ
打⑤
『あっはっはっはっ!! 見ましたか成田プロ』
『ええ、爆笑ものですね。こんなの見たことありません』
『ちなみに4人リーチは流れで親も終わるので財前香織はリーチしません。しませんが。これは流局で決まりです。そうですね、小林プロ』
『ですね。持ち持ちもいい所。こんなことあるんですね』
カオリ手牌
二三四②②③③455667
左田手牌
二三四八八③③⑤⑥⑦678
薬袋手牌
八八⑦⑦⑧⑧⑨⑨789中中
久本手牌
②②111222444中中
なんと! 4人が4人とも上下の相手と被っているシャボになりアガリ牌は1枚もないテンパイとなっていたのだった。
『これぞ、名勝負。これぞ名人戦ですね!』
『いや、すごいものを見た』
南1局は七本場。供託10000点となった。
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