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第十伍局【師団名人戦編②】
12巡目◉威嚇ポン
しおりを挟む(んもう! やっかいな体質ね。クールな私にしか使いこなせないわよこんなの)
《…いま使いこなせてなかったですけど》
(大会準決勝の役満テンパイでクールになれは私でもむりでした)
《フフッ! いや、笑い事ではないですね。申し訳ない。私のせいで》
(そんな、気にしないで。こんなのは笑ってくれればいいの。それにまだ始まったばかり! 私なら大丈夫だから)
《がんばって》
しかし、その後カオリにチャンスはしばらく訪れず、苦しい展開のまま耐えているのが精一杯だった。役満テンパイという大チャンスを逃しただけあり、そう簡単に回復の機会は来てくれない。
(くそぅ。このままじゃジリ貧だ。かと言ってアガる術はない。せめて、足を引っ張るような威嚇くらいしなければ…… 2回戦目で2位争いには参戦できるように)
「ポン!」
打9
『おっと! 財前香織この形から上家が切ったドラを叩きました!』
カオリ手牌
二四六②③⑥1188(⑧⑧⑧)
『どうするつもりなんでしょう? 頑張ってタンヤオのサンシャンテンですが』
『これは…… 威嚇ですね。足止めです。誰にもアガらせないぞと言うことでしょう。ドラ対子の手をアガリが遠いことから足止めとして利用するとは…… たいした娘だ』
『上家の薬袋選手は緻密な打ち手ですからドラポンされては無視できないでしょう。1番整った手格好でしたが——』
薬袋手牌
三三四伍①①③④45788 白ツモ
『白を引いてしまいましたね。きっとこれは狭く受けるぞ』
薬袋打三
『カン三が出ました! 財前香織の手が進みます』
カオリ「……」
『あっ… あれ? 財前香織鳴きません! 牌山へ手を伸ばします』
『なるほどね、あくまでこれは威嚇なんだ。これをチーして読みをタンヤオに絞らせるよりも色々な可能性を予想させてプレッシャー与えるつもりなんだろう。すごいな』
三切りしたあとの薬袋は萬子下ばかり引いては切り引いては切りの繰り返しとなり見事にテンパイを逃してしまう。カオリのポンひとつのせいで。そして——
流局
「「ノーテン」」
全員がノーテンで局は流れた。点棒に動きはない。しかし、本来ならアガリが出るはずの場面でそれを阻止したのだ。財前香織の逆転劇はここから始まる。そんな兆しの全員ノーテンであった。
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