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第十伍局【師団名人戦編②】
11巡目◉カオリ、祈る
しおりを挟む今日は師団名人戦準決勝B卓開催日だ。
出場選手
財前香織プロ
左田純子プロ
久本一夫アマ
薬袋光太郎アマ(お笑い芸人)
アマチュア枠から出ていた雀荘『富士』の元従業員である久本カズオがなんと準決勝まで残っていた。あの、勝てないのを理由に退店したカズオがである。
『小林プロの予想を聞いてもいいですか?』
『え、そうですねー。分かりません!』
『そんな!』
『いや、だって分かんないですよ。財前プロはまだ新人ですけど力はあります。左田プロはいま勢いがある人の1人。久本一夫さんはアマチュアの試練を勝ち抜いている猛者ですし、薬袋さんは芸人とは思えない緻密な麻雀の打ち手、こちらも芸能人枠で優勝してきた実力は本物です。どっち見ても強者で全員勝ちそうですよ』
『確かに分からないですよね。大会決勝の常連たちが今回は全員準々決勝あたりで敗退しましたからね。本命の河野プロも34期師団名人の古川プロも準々決勝敗退してますし』
『まあ、一番怖いのは結局、左田プロじゃないですかね昨年雀聖位についてからの勢いは凄いです。リーグ戦も好成績を叩いて昇級しましたからね』
『じゃあ私は財前プロに1票』
『ありえますね。彼女は強いです。っと、そろそろ時間になりますね。選手たちは揃っています』
『それでは! 時間になりましたので対局開始して下さい』
「「よろしくお願いします」」
ゲームを開始するやいなや東1局からカオリに勝負手が来た。
南家
カオリ手牌 5巡目
一一二二二八八八11589 9ツモ ドラ②
(開始早々四暗刻のイーシャンテン! すごいことになってきた)
『財前香織! 役満のイーシャンテンだー!』
『誰も使っていない一と19の受け』
『引けそうな予感がします!! 財前香織!』
その時。他家にも手は入っていた
西家
ジュンコ手牌 5巡目
三三四伍伍伍六②③④234
『おっと、少し目を離しているうちに左田プロはテンパイしていましたね!』
『仮テンですね。とりあえずダマでしょう。ツモ二の三色変化が理想的ですね』
カオリ次巡
ツモ9
『すんなり張ったー!』
「リーチ」
打8
カオリ手牌
一一二二二八八八11999
同巡ジュンコ
ツモ四
「リーチ」
打六
『おっと! こちらも勝負手になりました左田ジュンコ! 二三四伍待ちだあー!』
『ド高めは財前プロが暗刻子にしてるから薄いですけど、充分アガリはありそうですね』
(ジュンコさんもテンパイなの? やめてよー。これだけは絶対なにがあってもアガリたいのにぃ~)
そして次のツモ番、カオリは緊張のあまりしてはならないことをしてしまった。
(ン~~~!! 四暗刻!! どうしても四暗刻だけはアガらしてよ~~~!!)
《あっ、カオリ! 落ちつきなさい! そんなに強く祈ったりしたら——》
カオリ次巡
ツモ伍
(あっ… つい)
打伍
「ロン!」
三三四四伍伍伍②③④234 伍ロン
「12000」
《あちゃあ…》
役満テンパイのリーチ合戦についつい力んだカオリは4枚目の伍を引き寄せて左田ジュンコにハネマンを放銃してしまったのだった。
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