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第十伍局【師団名人戦編②】
5巡目◉女王シオリの半荘
しおりを挟む「では私たちは放送席につきましょうか」
「そうですね、小林プロ」
——
『さあ、準決勝A卓始まりました。さっそく選手たちの配牌を見てみましょう!』
(放送席からの声は卓に着いてる選手たちには届かない)
『おっ!? 成田さん、北家スタートの新田選手を見てください!』
新田手牌
二二三三④④⑥77東東南西 ドラ西
『配牌イーシャンテン!』
『さあ、第一ツモでテンパイするか!?』
ググッと心なしか力強くツモりに行く新田。そして引いたのは——
ツモ西
『ドラ引いて張ったーーーー!!』
『いえ、でもこれ難しいですよ』
『えっ?』
見てみると親が第1打で南を捨てていた。そしてドラ表示牌も南。つまり南はすでに残り1枚しかない。
『地獄の南か⑥か。ダブリーなのかダマなのか』
「……リーチ」
打南
新田は悩んだ末に⑥単騎のダブリーとした。それを鋭く読んだのが女王位の白山シオリだった。
(この男、手つきや雰囲気からして素人ではない。それが長考してダブリー…。テンパイに気付くのが遅れましたとかいうレベルの打ち手ではないだろうし、ダブリーなんだからダマにするかとかで悩んだってケースもあまりない。そうなると『待ち』の選択で悩んだと考えていいだろう。そして打南。2枚切れてる南にするかどうかで悩んだんだから単騎だ。ノベタンなら地獄待ちとの選択で悩んだりしてないから単純に単騎。3~7のような出にくい牌の単騎待ちが濃厚ね。1289と字牌だけ捨てとけば放銃はないだろう————)
ここまでの思考に0.5秒。
シオリ手牌
七九九九①②⑥⑧⑨1357 1ツモ
(純チャンやピンズイッツーが作れそうな配牌だったんだけどあのリーチを受けたらそうもいかないわね。とくに純チャンは無理そう。さてどうするか…)
打①
『①からいった!』
『小林プロ、どういうことでしょうかコレは?』
『おそらく、読みが働いてるんでしょうね。じゃなければこんな変な切り出しはない』
『読みと言っても…… ダブリーですよ?』
『しかし、長考していた。ダブリーは普通のリーチと違ってこのタイミングでしか成立しない手役ですからあまりリーチするしないで悩まない。となると待ち選択のための長考であると読めます』
『南切りリーチが待ち選択で悩んだ末の結論だとしたら地獄待ちと比較したわけだから良い待ちなわけがないとし端牌を切り出していったってことですか』
『おそらく… しかもそれだけじゃない』
『…というと?』
『12や89。それに字牌。そのあたりを捨てながら反撃するなら何を狙ったらいいかもイメージしてるそんな切り出しだと思います』
変化1
七九九九②⑥⑧⑨11357
変化2
七九九九⑥⑦⑧⑨11357
変化3
七九九九⑥⑦⑧113567
変化4
七九九九⑤⑥⑦113567
変化5
七九九九⑤⑥⑦133567
変化6
六七九九九⑤⑥⑦33567
するすると手牌は変わっていき、ついに理想テンパイを果たす白山シオリ。
「リーチ」
『白山シオリはきっとこの567あるいは678の三色を2巡目からイメージしてた』
『まさか…』
「ロン」
六七九九九⑤⑥⑦33567 八ロン
『白山の安め八が山にすぐあったーー! 新田選手ダブリーからまさかの一発放銃ですね』
『さあ裏ドラは!?』
ペロンとめくったその牌に刻まれていたものはまたしても末広がりなこの牌だった。
裏ドラ表示牌八つまり…
『乗った! 裏3枚!』
「12000」
東1局は白山シオリがしばらく連荘しダントツになる。シオリは女王のその実力を見せつけて、そのまま1回戦を支配したのだった。
準決勝A卓1回戦は圧巻する女王シオリの半荘。
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