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第十伍局【師団名人戦編②】

3巡目◉切れる現物を作らせない

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 ある日のカオリの雀ソウル中のこと。

カオリ手牌 切り番
三四伍六七②③④⑤4467 8ツモ ドラ4

 タンピンドラドラ3面待ち絶好の勝負手が来た。東3局7巡目で西家26000持ち。リーチで何も問題ないがカオリが少しだけ止まって考えた。
《なにを考えてるんですか??②切ってリーチしとけばいいだけの話のような…》
(いや、ここはコレがいい気がする!)

『リーチ』

打⑤


《⑤?》
(woman、全員の捨て牌をよく見て何か感じない?)
《いえ、なにも。私には普通のタンピン系狙いの基本的捨て牌にしか…》
(そうよ! タンピン系狙いの基本的捨て牌なの)
《それが⑤とどう関係する… あっ!》
(気付いた?)
《②が現物の場合は端寄りの②やその後①などを勝負して愚形を払った上での反撃になる時があるけど⑤が現物となれば柔軟な⑤を手放してしまうと枚数的に強い形での反撃は難しくなるので現物とは言え捨てる時は反撃を諦める時になる。そしてこの場面は全員がタンピンの普通な捨て牌。⑤の価値が高い手を作っている可能性は高い。⑤を現物にすることにより捨てて構わない現物を作らせない方針にしたのね》
(ご名答、切れる現物を作らせない選択ってこと。ま、そううまくいくか分かんないけど。でも面白い選択じゃない? 今思いついたの)

 カオリの選択はこの場面にピタリとハマり、親は①②⑤から⑤を切って保留としたがツモ④となりアタマをほぐして迂回。そのままノーテン。カオリが②を捨てていたら②①と落として③-⑥待ちで勝負していたはずだ。
 北家は⑤を少し引っ張ったがまだ勝負手でもない所から②を勝負する気にもならず打⑤としたあと⑥を引き、手じまい。
 カオリの手は長引いたが最後のツモで赤伍を引いて裏も乗り4000.8000という決定打になるアガリをしたのだった。ちなみにその間にカオリは⑦を引いており北家が②を押していたら振り込みになっていたはずだった。
(ウフフ。ゲームでもウーマン引いちゃった)
《しかも赤ね》

 カオリはゲームの麻雀も真剣に取り組み、いつ如何なる時も麻雀のことを考えていた。寝ても覚めても麻雀士。womanにもない発想を見つけるカオリは正真正銘のプロ雀士へと脳が成長していくのであった。


 そして、月日は過ぎていき明日は師団名人戦準決勝A卓開催日!
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