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第十伍局【師団名人戦編②】
2巡目◉期待値計算の申し子
しおりを挟む「準決勝進出か。相変わらずね、白山プロ」そう白山シオリに話しかけたのは女流Aリーグの杜若アカネだった。今日は本部道場の店員兼事務作業員として白山シオリと杜若アカネが召喚されていた。たまにそういう仕事をしなければならない時もある(都内在住の新人などは特に呼ばれやすい)
「3回戦シードもらってましたから。たいしたことないですよ」
「その3回戦シード貰ってるって時点ですごいんだってば」
「あ、そっか」
「でもね、アンタでも今回の準決勝は簡単にいかないかもしんないわよ。アンタが次当たる『井川美沙都』って女はタダモンじゃないからね。それだけは忠告しといたげる」
「へー…… でも、とりあえずは2位までになればいいんだし様子見ながら二着確保すりゃいいんでしょ」
「アンタに様子見とかできんの? いつでも勝ちをもぎ取りたいもんだと思ってたけど」
「あれ、バレてましたか。おっかしいなぁ、世間では冷静沈着。期待値計算の申し子。で通っていると思ってたけど」
「先輩プロを馬鹿にするでないよ。私にはアンタそっくりな麻雀する弟子がいるんだよ。二人はライバルだと思ってたけどね」
「成田プロか…… ふふ、あの人。いいよね熱くって。うん、ライバルか……」
シオリのその不敵な笑みにはどんな意味があるのかは分からなかった。たしかにノンタイトルの成田メグミと出れば出ただけ決勝に残りバンバン優勝するような白山シオリとでは格が違うが。それでも驚異となるだけの実力を持っている白山シオリ同世代女流と言えば成田メグミだけだと思われた。
この白山シオリという女性はプロ試験では首位合格をして、そこからほぼずっと勝ち続けているような天才である。ちなみに、職場の給料アップと社員旅行(沖縄)に連れてってもらいたいという動機でプロになった変わり者。
なので混合リーグには最初の1期だけ参加して、それ以降は女流リーグのみの参加としている。忙しいのは嫌なのだ。
「で、その成田プロはどうしていないの? 参加すらしてないようでしたけど」
「子供がまだ小さいからね。子育て優先よ。そういう所も含めてあの子は強いの」
(なんだ、参加してない事に気付いてるくらいにはメグミのこと気にしてたんじゃない。メグミ、あんたは女王が気にする相手になってるみたいよ。ふふふ、光栄じゃない!)アカネは師匠として少し鼻が高い気持ちになった。
「とにかく、井川ミサトを警戒すればいいんですね。まあ、新人と言っても準決勝に残ってる時点で只者ではありませんし。気を付けます。ご忠告ありがとうございます」
「いい麻雀を期待してるわ。あなたも、井川も、素晴らしい打ち手だと思っているのよ。だから、頑張れ!」
「はい!」
準決勝A卓は来週開催。
白山詩織プロvs新田忍アマvs豊田貴志プロvs井川美沙都プロ
この4人が生き残った。
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