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第十四局【師団名人戦編①】
18巡目◉リーチであぶり出す
しおりを挟む「財前プロありがとうございました。優勝して下さいね。おれ、応援してますから」そう言い残して橘浩樹は去っていった。
《橘さん、最後見逃してくれてましたね》
(うん、ちょっと複雑だけどおかげで準決勝進出だし素直に喜ぼうと思う)
《カオリは橘さんと話して少し親しくなったのに対して猿山プロは橘さんを少しバカにしてましたから。橘さんのこの選択は当然でしょうね》
(1回戦の時は私が見逃したから。プロとして、それの借りを返すつもりもあったんだと思う。なんにせよ、助かったわ)
————
カオリが準決勝進出を決めてホッとしていた頃。井川ミサトも準決勝進出を決めていた。
「ロン!」
ミサト手牌
伍七②③④⑤⑥⑦34566 六ロン
この局が天王山だった。
二着までになるにはなんとしても南場の親で稼ぐしかないミサトの親番。厳しい配牌を受け取るもツモが効いてなんとか役ありテンパイをした。が、待ちは悪いし打点もない。
(ダマでとりあえず連荘狙いかな)
そう考えていたが、対面のトップ目が牌を少しだけ横にしようとした。ほんの一瞬の小さな動きだが、それを見逃すミサトではない。
(あの動きは張ってる! でも、ダマを選択したってことは私の親を流して確実に1人潰そうって魂胆ね。…そうはさせない!)
「リーチ!」
ミサトは嵌六待ちのままリーチを敢行。そうすることで何が起きるか…。そう、追いかけリーチが入るのだ。
「リーチ」
ミサトの思惑通り追いかけリーチが入る。ミサトのせいでダマにしてても意味がなくなったからだ。まだ南2局、ダマで押し返したりオリたりするよりリーチ勝負で決定打にする事を選んだわけだ。しかし、これで脇2人はオリを選択してくれる。それこそがミサトの狙いだった。せっかくの親を脇の放銃による横移動で終わりにされてはたまらない。なのでリスク覚悟で愚形のままリーチしてダマテン者をあぶり出したのだ。そして…
伍七②③④⑤⑥⑦34566 六ロン ドラ1裏ドラ②
「7700」
しかもダマテン者は二-伍待ちであった。ミサトはリーチ直後に八を引いており、このリーチを敢行していなければ逆に放銃していた。
このアガリを皮切りに井川ミサトの猛連荘が始まった。結果、井川ミサトはダントツとなる。
————
今日の師団名人戦はここまで。準決勝開催日は来月となる。準決勝からはスタジオ開催で映像が残される事になる。
そして、カオリは避けては通れない問題を抱えていることに気付いた。それは…
(いい加減、新しい服買わないと…)
その日、ミサトたちと一緒に水戸に帰ると、まだお店が開いてたのでブルーのシャツを買う事にした。
露出もない。色気の全く感じられないシャツだが、この心の落ち着く深い青がいいと思い迷いなくレジへ持って行った。
最近は髪も少し巻いたりして、高校生の頃のセーラー服に切りっぱなしボブより少し大人な雰囲気になってきたカオリ。爪も塗ってみたりして。
雀士としてだけでなく女性としても少女たちは少しずつ成長していくのであった。
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