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第十四局【師団名人戦編①】
8巡目◉天下分け目
しおりを挟む今日は師団名人戦本戦。本戦は1回戦と2回戦が8月に、3回戦と4回戦が翌月に、準々決勝と準決勝がそのさらに翌月に、決勝戦が11月10日にという、予選期間も含めたらとても長い戦いになっている。
「じゃあ、カオリ。決勝戦で会いましょうね」
「ミサトも、頑張ってね!」
そう言い、少し見つめ合うと2人はお互いの卓に移動する。その表情からは(信じてるからね、決勝で会おう!)というメッセージが感じられた。
カオリの1回戦の相手は小林賢プロだった。師団のBリーグにいる中堅選手で成田メグミの同期では1番の出世頭だが、最近は残留が続いている。他の2人は新人プロの橘さんとアマチュアの方だったのでよく分からないが小林プロが強敵であることは間違いなかった。
「ああ、財前プロ。1回戦はきみと対局か。これは苦しい戦いになりそうだ」
「えっ、私はただの新人ですけど」
「いやあ、後ろ見してたことあるから知ってるよ。どういうカラクリかはわからないけど、財前プロの手順は普通じゃない。あまりにも鋭い読みをする。新人だからとか女だからとかって侮らないよ。むしろ逆。今日がきっと天下分け目の決戦になる。だろ?」
《バレてますね、只者ではなさそうです》
(新人の女と油断してくれればいいのに…)
一流のプロは対局相手の実力を見誤らない。力量把握のスキルを持っているかのように誰が強敵かを選択ひとつ所作ひとつ呼吸ひとつから見抜くものである。まして後ろ見などしていたなら小林クラスはカオリの力量を見抜いていて当たり前であった。
————
『では、時間になりましたので。これより師団名人戦本戦を開始致します!』
「「よろしくお願いします!!」」
座順
東家 財前香織プロ
南家 小林賢プロ
西家 嶋田翔太アマ
北家 橘浩樹プロ
勝負が動いたのはゲーム中盤。
東4局西家小林
ドラは西の1巡目
親の橘が第1打からドラをぶった切ってきた。
おそらく、全く使えないと踏んだタンピン系の配牌なのだろうがそれを小林がポン。
小林の配牌は良くて4巡目には次の手格好になっていた。
小林手牌
3466六七七八八八(西西西)ポン
ここで上家から八が出る。
これを小林は右から2番目と3番目の八を晒してポンとし隣の七を切り1番右を手牌に残す鳴き方をする。
すると普通に2-5待ちの満貫テンパイになるわけだが… カオリたちからはどう映るだろうか。
ポン(西西西)?八八七??????
から八ポンして打七
(なんか1枚右手側にまだ残ってる。
西は西家でドラだから鳴くのは当然だが、手はまだ整っていないのではないだろうか。
あの端っこの1枚はテンパイ時に捨てる予定の安牌ではないか?
だとしたら危険牌を捨てるなら今だな。万一の字牌単騎仮テンには気をつけないといけないが中張牌は通るだろう)
と考え、わざわざ危なそうな牌を先打ちして放銃を選んでしまう。
カオリ
打5
「ロン」
(えっ?!)
小林手牌
3466六七八(八八八)(西西西)5ロン
(——やられた!)
小林の技術により嵌められるカオリ。満貫放銃でラス落ちして勝負は後半戦に突入した。
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