上 下
248 / 297
第十四局【師団名人戦編①】

6巡目◉オダマキ

しおりを挟む

 カオリたちは水戸に帰ってきていた。
 最近ではなにかって言うと『グリーン』に寄り道して飲み食いするのが習慣となっていて、今日も例に漏れず麻雀部の少女たちはグリーンにたむろする。

「そう言えばメグミさんは大会出てたのかな?」アイスコーヒーを飲みながらカオリが思っていたことを聞いた。
「出場しないって言ってたわよ。忙しいんだって。上の子のお遊戯会とかとも被るって言ってたから」
「そりゃ子供優先だわ」
「てか子供2人いたんだ」仕事を終わったアンも話に混ざってくる。

 私たちは仲がいいようでその実、あまりお互いを知らない。語り合うことはいつだって麻雀のことばかりだから。どこに住んでいるとか、家族が何人とか、何歳であるとか、恋人はいるかとか、全然、全くというくらい興味を持たないのだ。そんな事話すより前に語り合いたい大事な麻雀コトで溢れてる。私たちは雀士で、麻雀でのみ繋がっているのだから。特にメグミやアカネやジュンコのことはよく分かっていなかった。知ってることは『麻雀が強い』ってことだけ。それだけは身をもって知ってた。

「さて、カオリ本戦おめでとうの会でもしますかー!」
「やめてよ、予選通過しただけなのに!」
「じゃー、マナミ予選落ちおつかれ会」
「いや、そんなんいらんて! 別にいいわよ現雀聖位だし! 来年は本戦シードだし」
「…まっ! とにかくお食事会ね」
「私ミートソース食べたい」
「じゃあ私はナポリタン」
「あっ、アイスコーヒーのおかわりください」
緑一荘オールグリーン』からユウもこっちにやってきた。「私もお腹すいてきたからピザ頼んでいい? みんなで食べようよ」
「賛成ー!」
 その時ふと、マナミはアイスコーヒーのミルクに目が行った。グリーンに置いてあるのは『スタージャ』のポーションミルクだ。そこには花の写真と花言葉が書いてある。

 オダマキ『断固として勝つ』

(へぇ~。かわいい花だと思ってたけど力強い花言葉なのね)

 これがきっかけでマナミはその後、自分がチームリーダーになった時に『オダマキ』という名のチーム名を付けるのだが、その話はまだ先のおはなし……
しおりを挟む

処理中です...