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第十四局【師団名人戦編①】
4巡目◉ルール無用
しおりを挟むついに予選4回戦。これに勝てば本戦トーナメントに参加となる。
カオリの4回戦の相手は全員知らない人だった。
正装で来るように定められている大会なのに何故か緑のポロシャツで来てる変なおじさんとベルトにギザギザのトゲのような金具が無数についてるおばさん。
それと、それら2人と知り合いと思われるスキンヘッドの男だった。
「安村プロ。いつからスキンヘッドに?」
「元々薄かったからね。どうせなら、と師匠に肖ってみた」
「あー…… きみの師匠って工藤プロだったっけ。強いよね、あの人も」
などと3人はカオリの知らないことを話していた。混ざって楽しく談笑しようなどという気分でもなかったのでカオリは自販機でコーヒーを買って時間になるまで卓から少し離れた飲食スペースで心を落ち着けて過ごす事にした。
《仲のいい3人のようですね。アウェー戦になる可能性がありそうです。まだ時間はありますし、挨拶でもして溶け込んでおきますか?》
(いい、いい、そういうのは。アウェー上等だし。それに試合始まれば結局誰しも自己都合でしょ。まあ、2位に誰を選ぶとかはあるかもだけど…… その程度のことは気にしない事にするわ。それに…)
《それに?》
(正装でと言われてるのにポロシャツだったり、ロック歌手みたいなベルトしてたり…… ああいう人達とはあまり関わり合いたくないかな。ルールは守る人がいい)
《それもそうですね》
10分ほどして予選会場Bの方から4回戦に残ったプロたちが移動してきた。少人数になったので会場Bを空けて1箇所でまとめたのだ。
『はい、それでは全卓プレイヤーが揃ったと思いますので予選4回戦。最終半荘始めて下さい!』
「「よろしくお願いします!」」
◆◇◆◇
その頃『月刊マージャン部』編集部は撮影で大忙しだった。まず第一に自称、美人編集長の左田純子が自分の写真に納得がなかなかいかなくて手間取っていた。
「なんかこれだと疲れてる感じで嫌だなぁ」などと文句を言って進まない。もう50代なのだからいくら美人とは言えシワが出るのは仕方がないし、歳を重ねた証拠でもあるそのシワも、ファンからしたらそれ含めて左田の魅力であるのだが、本人はまだ若い頃の自分の姿が脳裏に浮かぶ自分像なのでなかなかOKを出さない。
「充分キレイだと思いますけどねえ」と撮影スタッフが言うが
「じゃあこの写真の女と付き合える? 結婚する? 愛し合いたいと思えるの?」
「ウッ!」
「ウッって言うなアホ! 失礼だろが私に! とにかくね、そう思えるような女に撮りなさいよってこと! 多少は加工してもいいから。創刊号なんだから最初の印象が大事。そうは思わない?」
「おっしゃる通りで…… 頑張ります」
左田がそう言うので撮影スタッフの本気の加工技術と左田のメイク技術によって…… 誰なのかわからないくらいのキレイな左田純子像が出来上がった。
「……これは、やりすぎかな…… まるでルール無用じゃない。こんなの私にも誰なのか分かんないわよ」
「…ですね」
誰なのかわからないから不採用。
結局、左田の撮影は最後にすることにして中條ヤチヨの麻雀青春小説を誤字脱字がないかチェックして、著者近影の撮影を先に済ませた。
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