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第十三局【支援編】

15巡目◉悔しがる資格

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 飯田雪いいだゆきが師団名人戦の一般予選を再チャレンジしている頃。倉住尚子くらずみしょうこ浅野間聡子あさのまさとこは麻雀戦術本を読んで勉強をしていた。
 部室にはたくさんの戦術本が置いてある。
「アンタたちどーしたの。珍しく本読んで勉強なんてしちゃって」とユウがいぶかしむ。
「いや、なんかアンと私たちじゃかなりの腕の差があるって知ったから…… 鍛えたいなって」

「へえ、悔しいんだ?」
「悔しいって言うか。って言うかね…… ウチらはミサトさんみたいにストイックでもないし部長マナミさんみたいに熱心でもない。カオリさんみたいな真剣さもない。ユウさんやアンほどの天賦の才もない。それなら負けて当たり前でしょ。予選通過出来なかったからって悔しがる資格…… まだ持ってない。だから、資格の取得から始めようと思うの」
「私達も、悔しがりたい。せめて、負けたこと悔しいと思う権利くらい欲しい。あのミサトさんですら…… この前フリーで負けた時に『ついてなかったですね』って言ったら『いや、まだ鍛錬が足りなかっただけよ。ついてないとか言って終わりにする程わたしはまだ強くない』とかって言うんだもん。それを、私達ごときが…… 不ヅキを嘆いてたら、もうバカじゃん」

 ショウコとサトコはそこまで麻雀に熱中してる方ではない(あくまで麻雀部の中ではだが)しかし、2人とも一生麻雀には関わっていたいと思っているくらいには麻雀が好きだった。だからせめて悔しいと思いたい。負けを、悔しいと思う権利くらいは欲しい。そんなことを言って休日を丸一日費やして座学をする2人はもう充分麻雀に真剣だし。生真面目で。とても素晴らしいことだなとユウは思った。
 ユウはそんな2人を眺めてニコニコしていた。そして、ふと思い付く。

「そうだ、緑一荘オールグリーンに座学スペースを設けよう!」

 こうして『緑一荘オールグリーン』にはホワイトボードと長テーブルと椅子が用意され、定期的に座学を行う場を設けることに決まったのだった。
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