237 / 297
第十三局【支援編】
14巡目◉受けのスペシャリスト
しおりを挟む飯田雪は競技麻雀にハマった。
東京1区での予選を落ちた飯田ユキはもう一度チャレンジしたいと思い、あれから麻雀部で猛特訓をして東京2区で再チャレンジを試みた。結果、予選決勝にまでは残るが最終戦でこちらもまた再チャレンジしていた新田忍にやられてしまう。
東京2区からの予選通過はまず新田忍となった。(東京2区は会場が狭いので一回につき通過は1人。その代わり午前の部と午後の部があり、まだチャレンジの機会はある)
けっこうツイてたのに決勝で勝ち切れなかったことに肩を落とすユキ。それを見た新田がユキに話しかけてきた。
「飯田さん… だっけ? 1区の時も当たったよね。キミ、つええな。今回はオレの勝ちだったけど次当たれば分からない。午後の部もチャレンジしてみなよ。せっかく会場に来てるんだしさ」
本当言うと再々チャレンジなんてそんなことするほどお金に余裕がある暮らしはしてないから一度の再チャレンジで負けたら潔く諦めて午後はバイトに出勤しようと思っていた。だが、新田にそう言ってもらえて、思わずやる気が出る。加えて
「えー、これにて午前の部は終了ですが、午後の部にもご参加いただく方は午前の参加用紙を見せていただければ参加費は半額になります。参加用紙は捨てずに午後またいらして下さい」
(半額!)
すぐに店へと電話をかけるユキ。
「……あ、店長。…はい。そうなんですけど、午後の部が… はい。だって…… 半額なんです… あ、ありがとうございます! 頑張ります」
「新田さん、ありがとうございます。私、午後もチャレンジしてみます!」
「頑張れ!」
新田忍に強かったと評価されたのもあり、ユキはいつになく燃えていた。他人からそんな風に麻雀を褒められたのは初めてのことだったので、とにかく嬉しい。
「リーチ!」
ユキ手牌
一二三四六七八九22888 ドラ九
普段のユキならダマにしてそうなテンパイであるが、いまユキは燃えていた!
リーチ一発目に九をツモるも、さらにその2巡後
「ツモ!」
一二三四六七八九22888 伍ツモ
赤伍萬をツモる。いや、赤は抜いてないだけで関係ないのではあるが。
「2000.4000」力強い満貫
(やったー! イッツーのカン5は好きなのよねー。なにその愚形って一瞬見えて実は最高形ってのが面白いし)
(いいアガリをするなあ)
飯田の麻雀を午後から会場係のバイトをしている福島弥生も見ていた。
(この子。もし5200ダマにしていたら九を引いた時点でシャンポンに切り替えてリーチにしてしまうかもしれない。思い切りのいいリーチをしたからこその満貫ツモ。こういうのは大きいのよね)
このアガリを皮切りにしてユキの猛攻が始まった。
ユキはあまり先手を取れなかったが、だからどうしたとばかりの反撃をする。彼女にとっては先制攻撃されることはヒントをもらうことのような感覚で。
先制リーチ? ああ、テンパイしてたんだ。教えてくれてありがとうございます。
チー? 面子構成教えてくれてありがとうございます。大ヒントになりました。
といった具合だ。ほんの少しすら怯まない。むしろ、歓迎する。それが飯田ユキであった。
ユキに対して以前、マナミが「受け身になってる時に全くネガティブにならないね」と言った事があった。するとユキはこう答えた。
「どうせ戦わないといけないなら相手の情報が少しでも漏れてる方がマシじゃない? って思ってるんだけど」とユキは言う。全くもってユキの言う通りである。
「それに、この麻雀部の面子で打っている限りほとんど先手になんてなれないんだし。先手とれた時だけ攻めるなんて甘い考えで勝てるわけない」ともユキは言う。
麻雀部で先手を取られ続けていたユキは知らぬ間に受けのスペシャリストになっていた。
気がつけば午後の部は圧倒的な大差でユキの優勝。
「やったー!!」
「おめでとう! 本戦も一緒に頑張ろうな!」と観戦していた新田からも祝福を受ける。
「うん! ありがとう」
東京2区からは
新田忍
飯田雪
以上2名が予選通過となった。
10
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
声劇・シチュボ台本たち
ぐーすか
大衆娯楽
フリー台本たちです。
声劇、ボイスドラマ、シチュエーションボイス、朗読などにご使用ください。
使用許可不要です。(配信、商用、収益化などの際は 作者表記:ぐーすか を添えてください。できれば一報いただけると助かります)
自作発言・過度な改変は許可していません。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる