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第十三局【支援編】
11巡目◉黎明期
しおりを挟む決勝卓というのはトータルスコア上位4名が集まる半荘一回勝負の卓。トップか2着が本戦に進む可能性が高い。まれに決勝卓に集まった4人以外が別卓で猛烈に大きいトップを取ってトータルポイントで決勝卓のメンツをまくることがあるが基本的にはこの4人から本戦出場者が決定されるとみていいだろう。
カオリとwomanはユキとカズオの丁度両方の手牌が見える位置にいた。
すると気付く。カズオのその丁寧な麻雀に。
北家
カズオ手牌
三三②③④677北北(白白白) ②ツモ ドラ①
このドラが①での②③④という面子。ここに②を引いた時にカズオは②を※空切りしたのだ。確かに、面子構成上不要牌であってもそれは空切りをするべき牌だ。
(※空切りとは。持ってる牌と全く同じ牌を引いた時に持ってきた牌と手の内の牌を入れ替える行為のこと。読む相手のミスリードを狙って行う戦術のひとつ)
なぜなら今後①を引いたら間違いなく④と交換するからだ。その時②はツモ切りで④手出しならクイックが露見してドラを持っていることが判明するが②手出し④手出しとなれば話は別だ。②.④の順の手出しなら①周辺である危険牌の②をまず処理していったカンチャンターツ処理とも見えるのでドラクイックは露見しない。
今は何も役に立たない空切りでも次の変化をした場合に役に立つ補助の空切りというものもあるのである。先の変化までよくよく考えたカズオの空切りは非常に良い戦術であるし、何より相手をリスペクトしているのが窺えた。ここまで丁寧にやるべきだと思って戦っている。
《わかりましたかカオリ。いまの空切りの意味》
(ドラ引きに備えてんでしょ。すごい丁寧な人でビックリした)
《これこそが麻雀ですよ。いいものを見ました》
(ほんとそうね)
たった1枚の牌の所在を露見させないため。それだけのために備えた空切り。富士にいた時のカズオはそこまでの次元の麻雀を打つような選手ではなかった。カオリたちだけでなく久本カズオもまた人知れず鍛錬を重ね、日々力を付けていた。
麻雀界は今日も本気の雀士たちによって等級の高い闘牌が繰り広げられていく。
今というこの瞬間こそが麻雀界の黎明期なのであった。
「ロン!」
三三①②③67北北北(白白白) 5ロン
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