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第十三局【支援編】
5巡目◉マナミの誕生日
しおりを挟む4月20日。明日はマナミの誕生日だ。ついにマナミも明日で二十歳。大人とされる年齢である。
その日の夜、マナミは夢を見た。
○○○○○
〈財前真実さん。ずいぶん強くなりましたね〉
「だ、誰?」
〈私はラーシャ、あなたに憑いたラシャの付喪神です〉
「ラシャ? 麻雀マットのこと?」
〈そうです。あなたがお姉さんからもらった麻雀マットを何年も大切に手入れしたので付喪神が憑いたんです。私はあなたの勝利をきわめてさりげなくアシストすることに徹していました。あくまでお手伝いという形で、答えを教えることはせず〉
「あっ、たまにビリッとくるのはもしかしてアナタがやってたの?」
〈ええ、余計なお世話かとも思いましたが、でも最近は明らかに間違えた選択などはしなくなって来ましたよね。なので、私からのアシストはもう終わりにします。いいですよね。もう大人ですから。神様がいるのは小さい頃だけってのは物語のセオリーですし〉
「えっ、いなくなっちゃうってこと?」
〈私はいつでもラシャに宿っていますよ。ただ支援しなくなるだけです。見えなくても、聞こえなくても、マナミのそばに————
ピピピピ! ピピピピ!
ガシャ!
目覚まし時計が鳴ってそこで目が覚めた。今日は土曜日だがマナミは早番の日なので起きなければならない。
誕生日の日くらいゆっくり休んだら?とカオリは言っていたが早番でさっさと仕事を終わらせて、その後でゆっくりすることにしたのだ。
「なんだか変な夢を見てた気がする…」
(断片的にしか思い出せないけど… 私には付喪神が憑いてて、でももう大人だからいなくなる… そんな感じだったような… まあ、ただの夢よね)
とは言え気になったは気になった。本当にただの夢だったのだろうか。
その日、試しにわざと変な牌を捨ててみた。
マナミ手牌
一二三②②③⑦⑧123778
ここから
打③
(ピリッと来ない…)
一二三②②⑦⑧123778 ⑨ツモ
(ええい! これならどうだ!)
二に手をかけるマナミ
(……なんにも感じない。あの間違いを直感するような電流は実は神様がくれたギフトだったのね… 知らず知らずのうちに私は神様からの支援を受けていたんだ。そして、大人になった今日なくなったということか…… にわかには信じられないけど。一二三の二を捨てようとしたのに何も感じないのは…… そういうことなんだろうな)
そう思うとマナミは掴んだ二をそっと戻した。やはりこれだけは切るわけにはいかない。
(そう言えばカオリは私が不思議な力があるって話した時、疑いも持たずに聞いてくれたな…… あとで話してみよう。今日見た夢のこと)
その日の夜、マナミは家でケーキを家族と一緒に食べたあとお父さんと一緒にビールを飲んだ。
「なにこれ、苦いなぁ~。こんな苦いものをみんな飲んでたの? よくわかんないなー」
「ははは! まあ無理して飲むこともない! 飲むことが許される年齢になったってだけだからな。とにかくおめでとうマナミ」
食事を楽しんだ後、部屋に戻って今朝の夢のことをカオリに話した。
「……てなかんじで、大人になったから私の勘の良さはもうなくなったってワケ。まあ、信じられないかもだけど」
その話を聞いたカオリは驚きと戸惑いで真っ青になった。
「カオリ?! どうしたの? 大丈夫?! カオリ!!」
(womanが… いなくなる?!)
師であり、パートナーであり、生涯の親友であると思っていたwomanがあと数ヶ月後には消えるのかと思ったらカオリは熱が出てきて寝込んでしまった。
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