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第十一局【麻雀教室編】
9巡目◉ドライブスルー
しおりを挟む喫茶店『グリーン』は店舗の拡張を行った。厨房の壁側に出窓を設置してそこでドライブスルー出来るようにしたのだ。それはドライブスルーだけが目的ではなくて、麻雀教室に来てる人にも注文の受け取りが簡単になるようにした一石二鳥のアイディアだった。
この提案はユウの思い付きによるものだ。一度、アイスコーヒーを麻雀教室まで持って行こうと思って持ち歩いていた時に渡り廊下の段差で躓いてこぼした事があり、足は痛いわ、グラスは割るわ、コーヒーはぶちまけるわ、恥ずかしいわで散々だったため持ち込むのではなくてすぐ近くに受け取り場所があればいいのにな、と思ったのがきっかけだった。それを言うとすぐに実行に移すグリーンのオーナーたちはさすがの行動力と資金力だ。
「うん! いい出窓が出来上がった! これでここにインターホンを付けてすぐ隣に扉を設置したら完成ね」
「扉があることによって何かと便利にもなるし、これはいいアイディアでしたね」
「簡易的なレジも設置しましょう。小銭のやり取りで時間を取られないように」
「そうね、これから楽しみね。良かったわ、広い駐車場で。おかげで麻雀教室は設置されるし、ドライブスルーも出来るようになるしで夢が広がるじゃない」
その数ヶ月後。麻雀教室とドライブスルーは一気に完成する。それにより、駐車場スペースに麻雀教室がある事が自然と知れ渡り、ドライブスルーは麻雀教室の宣伝にもなったのだった。ここまでは予想してなかったので嬉しい誤算。まだ、アンが高校を卒業していないので麻雀教室の本格的な営業開始は春からとしようと思っていたが「裏の駐車場にあるあの麻雀の教室? いつからオープンするの? 始まったら教えてほしい」という客がチラホラ出ていて、ユウとアンの麻雀教室は明らかに2人だけでやるには人気がありすぎると思われた。
「どうするこれ。多分、スタッフ足らないよ」とユウがアンに嬉しい不満を言っていた。それを見たショウコが、
「なによ、私もいるじゃない。3人なら大丈夫でしょ」と言う。
スタッフの欠勤により臨時で働いたのがきっかけでショウコも今ではグリーンの主戦力になっていた。高校卒業後は調理師専門学校に行くつもりと聞いていたが。
「専門学校は行かないでグリーンで働きながら調理師免許取るつもりだから私も麻雀教室を手伝うわ!」
「えー! 助かる~。ショウコありがとう!」
来年の春へ向けて麻雀教室オープンの準備は着々と進んでいた。
ユウの夢はアマチュアが敷居が高くないと思える麻雀教室を作って1人でも多くの人に麻雀の素晴らしさを伝えていくこと。その夢は友人知人を巻き込んで想像以上に順調に叶えられて行くことになるのであった。
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