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第十局【激闘!女流リーグ編】

5巡目◉麻雀教室建設計画

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 喫茶『グリーン』にはアルバイト店員が5名と社員が2名それにマスターである斎藤和宏さいとうかずひろさんとオーナー夫婦がいて計10名でやりくりしている。マスターは要するにご両親の作った店を任されている二代目なのだ。オーナー夫婦は全面的に息子に店を任せており、あまり出てこない。しかし、アンがいる時だけは違った。とくに奥様の斎藤光子さいとうみつこさんはアンのことをいたく気に入っており実の孫かのように可愛がった。
「ほんと、アンちゃんはいい子ねえ」が口癖な程、目一杯に可愛がってくれるからアンは言い出せないでいた。ここでの仕事は修行だけのつもりで、いずれ東京に出て行こうと思ってる。ということを。

 その事をその日来ていたユウに相談していた。
「いずれは私たち、麻雀教室をやるでしょ。その、多分東京でやる方がいいのはわかるんだけど、どうしてもここのおばあちゃんが気になっちゃって… 私自身やめたくないし、でも、ユウさんと夢叶えたいしで、いつどうしたらいいか分からないの…」
 すると、実はトイレに入っていた光子さんにその話が全て聞こえていた。
「…話は聞いたわ。ごめんなさいね。私が若い子の夢を邪魔してたなんて」
「違います! 邪魔なんかしてないの。ただ私が優柔不断なだけで」
 すると閃いたように「インターネットを使えばどうかしら」と光子さんが言った。

「そうよ、この店はムダに広い駐車場があるからそこに簡易的な施設を用意して麻雀教室を可能にするの! うちのメニューも頼めるようにしたらいいわ。そして、インターネットも繋げてネットで麻雀教室も可能にしたらいいじゃない!そしたら…」(そしたらアンちゃんと離れ離れにならないもの。もう、孫を失うのは二度とごめんよ)
「そっ、そんなこと。そもそもお金がすごくかかりませんか?」
「だてに長生きしてないわよ。私も旦那も、若い子の夢を応援するくらいのお金チカラは持っているつもり! 無理なことは何もないわ。いいわよね、あんた」
「好きにしなさい。金には困ってない。使う予定も無かった金だ」
(そんなに甘えていいのかしら…)とユウは思ったが、アンは「それ、いいですね!」とやる気だ。こうなれば乗りかかった船だ。そもそも自分の夢にアンを巻き込んだのはユウなのだから、今回は逆に巻き込まれてみるのも面白いかもしれない。
「…やってみようか」

 こうして、光子さんの提案により喫茶グリーンの駐車場に麻雀教室建設計画が始動した!
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