上 下
172 / 297
第十局【激闘!女流リーグ編】

4巡目◉ゆかり

しおりを挟む

 財前姉妹は喫茶『グリーン』で取材を受けていた。月刊麻雀師団という見た事も聞いた事もない月刊誌の取材だそうだ。
(こんなのがあったのか)と2人とも思ったが、聞いたことない雑誌ではあるけどわざわざ水戸まで出向いてくれたので誠意ある対応をしなければと思った。
「師団のプロが働いてる雀荘には置いてると思うんだけど、読んだ事ないですか?」
「ごめんなさい、知りませんでした」
「私も」
「おかしーなー。『ひよこ』なら成田プロがいるから置いてると思ったのに」
「まあ、ひよこウチは本棚が無いからね」
「本棚がない?!」
「それらしきものが沢山あったような跡は床にあるけど今はそこにケータイ充電器が各種無料でご自由にという形で置いてあります。小さな雀荘ですからね。スペースを大切にしてるんです。新聞ならありますけど」
「多分、昔は卓数が少なかったんじゃないかな。待ち席付近の1台だけ最新機種だから。あれを置くために待ち席付近にぐるっとあったであろう本棚を無くして増卓したんじゃない?」
「はあ、なるほど。繁盛してるって事ですね、そう言う理由なら仕方ないかー。でも最新号だけでも新聞と一緒に置いて欲しいなあ」
「店長に相談してみますね」
「頼むよ」
 そう言って記者は一口アイスコーヒーを飲む。
「…! うまい! このアイスコーヒーは?!」
「そうなんですよ。ここアイスコーヒー美味しいんですよ」
 すると店主が声をかけてきた。
「ありがとうございます。麻雀雑誌の記者さんですか? …このアイスコーヒーは昔、千葉県に住んでいた時に働いていた喫茶店で教わったものでね。そこもアイスコーヒーで有名な店でした」
「それ、勝田台の『えにし』じゃないですか!?」
 店主は驚いて目を丸くした。
「どうしてそれを。あなたは?」
「私、出身が八千代台で勝田台には小学校の頃引っ越してしまった親友がいたからちょくちょく行ったんですよ、自転車で。到着するととりあえずえにしのアイスコーヒーを飲みに行きました。あの味は忘れられません」
「それなら知っていますか? あそこのマスターも麻雀がプロ級なんですよ」
「それは知らなかった! なんだか縁がありますね」
「そうですね、店名がえにしなだけはありますね。私は恥ずかしながら離婚してしまって何年も会えていないのですが、この子達より少し年上くらいの歳の娘がいましてね…… その娘には『ゆかり』と名付けました『縁』と書いて『ゆかり』です。そのくらい、あの喫茶店での修行時代は私には充実した時代でした…」
 すると、そこに買い物に出ていた竹田杏奈アンが戻ってきた。
「ただいま戻りましたー。…あれ、先輩たちだ。いらっしゃいませ」
 緑色のエプロン姿がアンには似合っていた。今日もアンは可愛らしい。
「彼女は?」
「あの子は竹田杏奈さん。私たちの一個下で、一緒に麻雀を研究する仲間です」
「麻雀を研究?!」
「そうなんです、私たちは麻雀の研究を高校生の頃からずっと毎日やってきました。実践して検討して計算機やパソコンを使ったり… まだ誰も辿り着いていない麻雀の真理を探っていきました」
「まさか… 女子高生がかい?」
「そうですよ、証拠に… これはその資料」
 マナミは個人的に作った戦術ノートやレポートをカバンから取り出して見せた。

「……信じ難い… が、事実このような戦術は聞いた事がないし、そして、実に的を得ている新たな着眼点ばかりだ… これを君たちが?」

「そうです、私たち『麻雀部』が作りました」

(たまげたな… そりゃあ昇級するはずだ)

「ちなみにミサトも麻雀部です」

「えっ! 新人王のかい?」

「はい、私たちは親友でライバルなんです彼女には絶対負けられない!」

 記者は他にも色々聞いて、アイスコーヒーをもう一杯おかわりして(おかわりからは半額)満足して帰っていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

声劇・シチュボ台本たち

ぐーすか
大衆娯楽
フリー台本たちです。 声劇、ボイスドラマ、シチュエーションボイス、朗読などにご使用ください。 使用許可不要です。(配信、商用、収益化などの際は 作者表記:ぐーすか を添えてください。できれば一報いただけると助かります) 自作発言・過度な改変は許可していません。

これ以上ヤったら●っちゃう!

ヘロディア
恋愛
彼氏が変態である主人公。 いつも自分の部屋に呼んで戯れていたが、とうとう彼の部屋に呼ばれてしまい…

エロ・ファンタジー

フルーツパフェ
大衆娯楽
 物事は上手くいかない。  それは異世界でも同じこと。  夢と好奇心に溢れる異世界の少女達は、恥辱に塗れた現実を味わうことになる。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

処理中です...