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第十局【激闘!女流リーグ編】
4巡目◉ゆかり
しおりを挟む財前姉妹は喫茶『グリーン』で取材を受けていた。月刊麻雀師団という見た事も聞いた事もない月刊誌の取材だそうだ。
(こんなのがあったのか)と2人とも思ったが、聞いたことない雑誌ではあるけどわざわざ水戸まで出向いてくれたので誠意ある対応をしなければと思った。
「師団のプロが働いてる雀荘には置いてると思うんだけど、読んだ事ないですか?」
「ごめんなさい、知りませんでした」
「私も」
「おかしーなー。『ひよこ』なら成田プロがいるから置いてると思ったのに」
「まあ、ひよこは本棚が無いからね」
「本棚がない?!」
「それらしきものが沢山あったような跡は床にあるけど今はそこにケータイ充電器が各種無料でご自由にという形で置いてあります。小さな雀荘ですからね。スペースを大切にしてるんです。新聞ならありますけど」
「多分、昔は卓数が少なかったんじゃないかな。待ち席付近の1台だけ最新機種だから。あれを置くために待ち席付近にぐるっとあったであろう本棚を無くして増卓したんじゃない?」
「はあ、なるほど。繁盛してるって事ですね、そう言う理由なら仕方ないかー。でも最新号だけでも新聞と一緒に置いて欲しいなあ」
「店長に相談してみますね」
「頼むよ」
そう言って記者は一口アイスコーヒーを飲む。
「…! うまい! このアイスコーヒーは?!」
「そうなんですよ。ここアイスコーヒー美味しいんですよ」
すると店主が声をかけてきた。
「ありがとうございます。麻雀雑誌の記者さんですか? …このアイスコーヒーは昔、千葉県に住んでいた時に働いていた喫茶店で教わったものでね。そこもアイスコーヒーで有名な店でした」
「それ、勝田台の『えにし』じゃないですか!?」
店主は驚いて目を丸くした。
「どうしてそれを。あなたは?」
「私、出身が八千代台で勝田台には小学校の頃引っ越してしまった親友がいたからちょくちょく行ったんですよ、自転車で。到着するととりあえずえにしのアイスコーヒーを飲みに行きました。あの味は忘れられません」
「それなら知っていますか? あそこのマスターも麻雀がプロ級なんですよ」
「それは知らなかった! なんだか縁がありますね」
「そうですね、店名が縁なだけはありますね。私は恥ずかしながら離婚してしまって何年も会えていないのですが、この子達より少し年上くらいの歳の娘がいましてね…… その娘には『ゆかり』と名付けました『縁』と書いて『ゆかり』です。そのくらい、あの喫茶店での修行時代は私には充実した時代でした…」
すると、そこに買い物に出ていた竹田杏奈が戻ってきた。
「ただいま戻りましたー。…あれ、先輩たちだ。いらっしゃいませ」
緑色のエプロン姿がアンには似合っていた。今日もアンは可愛らしい。
「彼女は?」
「あの子は竹田杏奈さん。私たちの一個下で、一緒に麻雀を研究する仲間です」
「麻雀を研究?!」
「そうなんです、私たちは麻雀の研究を高校生の頃からずっと毎日やってきました。実践して検討して計算機やパソコンを使ったり… まだ誰も辿り着いていない麻雀の真理を探っていきました」
「まさか… 女子高生がかい?」
「そうですよ、証拠に… これはその資料」
マナミは個人的に作った戦術ノートやレポートをカバンから取り出して見せた。
「……信じ難い… が、事実このような戦術は聞いた事がないし、そして、実に的を得ている新たな着眼点ばかりだ… これを君たちが?」
「そうです、私たち『麻雀部』が作りました」
(たまげたな… そりゃあ昇級するはずだ)
「ちなみにミサトも麻雀部です」
「えっ! 新人王のかい?」
「はい、私たちは親友でライバルなんです彼女には絶対負けられない!」
記者は他にも色々聞いて、アイスコーヒーをもう一杯おかわりして(おかわりからは半額)満足して帰っていった。
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