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第十局【激闘!女流リーグ編】
2巡目◉強者の見抜き方
しおりを挟むその日、ミサトは『ひよこ』でフリー打ちしようとしていた。待ち席で空きが出るのを待っているミサト。…するとミサトのバイト先の店長である小宮山とその部下かな? と思われる方が来店する。
少し暖かくなってきたと思ったらまた最近は冷え始めていて、その部下っぽい人は青い帽子を深く被っていて顔ははっきりと見えないが下は厚手のジーンズに少し厚みのあるフカフカした靴下を履いていた。それだけで、ミサトは直感する。
(この人は強そうだ)と。
結婚してる感じはしないから多分自分で選んだ服装だろう。この靴下。季節という先入観にとらわれることなく、自分の感覚で(今日は寒い)と感じ最適な服装を選択出来る判断力。
毛玉のできやすい素材のはずなのに綺麗なままの毛玉ひとつない靴下。
つまり、几帳面。ズボラな人なら隙もあるが几帳面だと麻雀にも隙がない。
このように、ミサトくらいになれば一目見ただけで強いかどうかはやる前から見当が付くのである。
(これは、締めてかかる必要がありそうね)
「こちらの方は?」
「あ、ミサトにはまだ紹介してなかったな。ウチの事務仕事担当の飯田君だ。まだ18歳だけどよく気付く子でね。裏方だからあまり顔を合わせることもないけど、同じ店の仲間だから。よろしくな」
「飯田です。よろしくお願いします」
「私は麻沼スズメこと井川ミサトです。よろしくお願いします」
(男性にしてはずいぶん声が高いな)
「飯田君はフリー雀荘に興味があると言ってたので連れてきたんだ。ゲームでしかやったことない子だから。もし良かったらでいいんだがミサトも一緒に0.5で教えてあげてくれないか?」
「あ、そういうことでしたか。1.0で3人同卓の血で血を洗うバトルが始まるのかと思いましたよ。0.5ね。それなら、いいですね」
ひよこは本来0.5と1.0のツーレートなのだがミサトの行く時間帯は0.5が滅多に立たないのでその存在を忘れていた。
「よし、じゃあフリー雀荘なのでまず飯田君は帽子を取ろうか。つばを後ろに回すのでも構わないけど。目元が見えないまま打つのはマナー違反だからね」
「そうなんですね」
そう言うと飯田は帽子を取った。
「ん!?」
ミサトがある事に気付く。
「飯田君… 目元、メイクしてない? ていうか可愛くない? え? きみ… 飯田『さん』なんじゃないの」
「あ、はい。私は飯田雪…。デカいしガタイはいいし、胸もないしお尻も小さいけど、一応女やらせてもらってます…」
「なーんだ! 女の子だったのか。ごめんなさい、顔が見えないから勘違いしちゃった。顔はとっても可愛いのね。なんだなんだそっかー。女の子かー。それなら服装がきちんとしてたのもある程度は納得!」
「服装?」
「その靴下に毛玉無いのすごいなって思って」
「あ、毛玉はみっともないんで必ず取ります」
「服装も、今日が寒いのをしっかり把握してるし」
「起きたらまず雨戸を開けて、その後天気予報を見る派ですので…」
「うん、麻雀向いてる!」
「ほんとですか。私一応ゲームの麻雀ではまあまあ勝ててるんですよ」
「じゃあ、やる前にまず店長がルール説明すると思うからちょっと待ってね… 店長ー! 新規さんだよー!」
————
——
「…とまあ、ルール説明は以上です。何かご質問等ございますか?」
「多分、大丈夫です」
「それではお待たせしました。ゲームお待ちの3名様。0.5の卓へご案内です」
(知り合い同士の3人同卓は本来ならやらない事なのだが、今日はたまたま居合わせただけだし低レートなので店長がそこに入る事でまあ、よしということになった)
「よろしくお願いします!」
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