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第九局【新世代編】
15巡目◉さよなら、私のプロリーグ
しおりを挟む成田恵美には決めていたことがあった。それは、今期も昇級できないようなら競技プロを引退する。ということ。
子供はまだ小さいし、雀荘の仕事もしているしでその上プロリーグまで全部出るなんて忙しい生活をしていたら自分が参ってしまう。
これだけやっても昇級できないのならもう辞めた方がいいのかもしれない。子育てに専念できるしいい機会だ。雀荘のプロ手当は無くなるけど、それでもいいじゃないか。旦那がちゃんと稼いでくれるんだから。そう考えて決意をした上で今期のリーグ戦に挑んでいた。そして、8位。
(なんで8位? 悔しいじゃないのそんな終わり… 惜しい所なんて、そんな順位にはなりたくなかった。でも、これが運命なのかな。これが私の力の限界なのかも…
そうね… 思えば惜しいことばかりだった。新人王戦は2回決勝戦に残っていながら2回とも準優勝。昇級はしても産休育休でやむなく休場して降級。良かった事と言えば師匠の杜若茜さんと一緒に勉強会を開催したらそれがけっこうな評判になったことかな)
「…あーあ。こんなに頑張ったのになぁ…。アカネさんになんて言おう。でも、自分で決めたことを反故にしてはいけない。決めたら行う。それが勝負師の誇りだもの…」
数分間メグミはその場に立ちつくしていた。
(とりあえず、帰ろう)
すれ違う人達が見てくる。
(なんだろう。なんか付いてるかな?)と駅の鏡を覗き込んだらびっくりした。そこには涙を流している女がいた。
「あれ、わたし泣いてたんだ… 恥ずかしいな、はは、止まんないし… 参ったな」
悔しい
悔しい悔しい
悔しい悔しい悔しい!
「昇級したかった…! 負けたくなかったよ。悔しいよ… アカネさん!」
上野に行くと飲み屋に1人でふらっと入って浴びるほどの酒を呑んだ。そこで記憶は途切れてて目が覚めたら自宅のベッドにいた。
(あ、もうこんな時間。起きなきゃ)
「わたし、プロを辞めるのか…」
いまいち実感が湧かないが、約束を守るのが成田メグミのいいところ。それは自分との約束も同じである。
とりあえずいつも通り家事をして子供を保育園に送り届けてから出勤。
(店長にはいつ話そう)そんな事を考えていた。
「さよなら、私のプロリーグ」
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