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第九局【新世代編】

12巡目◉運命の局

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「ツモッ!!」

中野手牌
一二二二三四四伍伍六六七八 九ツモ

 中野雅也が親の三倍満トリプルを決めた。最後の最終半荘のオーラスで積みに積んでの12400オール。まさかまさかの大大大逆転だ。これにより首位昇級は中野でほぼ確定。カオリは2位になった。3位に入ったのは微差でミサト。4位には神田川がつけていた。3位までは賞金があるのでミサトもカオリも喜んだ。バイトしてる学生の身には大助かりだ。
 5位以降はまだ誰になるか分からない混戦。そこにマナミもメグミもいた。とは言えマナミはリードしており、よほどやらかさない限りは昇級出来そうだが、その条件は細かくは分からない。ただ、勝たなければならない。そう思っていた。

 その最終半荘のオーラス。

 親はメグミ。トップ目はマナミという7巡目。

マナミ手牌
四伍六七④⑦⑧⑨789南南 ドラ一

 ここへ最高のツモ八!

 ④切りテンパイの高め三色だ。しかしアタマが役牌であるためピンフにはならず、三-六でも出アガるためにはリーチをかけなければならない。
 場には八が3枚切られていた。

(どうする? 八が場に3枚出ているし九はダマで拾えるかもしれない。でも三や六だってもう中盤の巡目でオーラスだ。いらなくなれば出すわよね。それを捕まえられないのはマズイかしら? …でもでも、ミサトが『守るためには役を作りリーチをかけない』って言ってたし。とは言え、この待ちの場合は…)

 マナミにしては考え込んだ。マナミ史上リーグ戦で初めての長考だ。

「……」

打④
ダマ

 するとその巡目に2着目の下家とよだが手出しの打5。それは現状の全体図を見る限り最も危険な切り出しだと言えた。これには場が凍りついた。
(なんて危険な5切り! とすると、三面張でも出来たか? 二三四伍六35とかから先に最も危険な5から処理して次巡3や7が出る可能性がある。それをさせないように圧をかけないと… ここでブレーキをかけさせないとアガられる!)
 この局に下家が満貫級をアガればトップ逆転だ。5位以降は混戦だからこれを捲られるのは危険だとマナミは判断した。そして。

ツモ⑧
これを空切からぎ

打⑧

「リーチ」

 マナミはリーチを敢行する。
(好きに打たせないためにはリーチするしかない! 都合よく空切り可能な牌を引いてきたのは幸運だった)

 豊田は次巡切ろうとしていた3を止めて手を迂回させ始めた。

豊田手牌
一一二二三三④⑤⑤⑦⑨113

 ピンズの上が狙い所の全体図であることをよく理解していた豊田はここからリャンメンではなくなるが現物切りでイーシャンテンキープの打④を選択。すると次巡ツモ⑨でテンパイ。打⑦か打3としチートイドラドラだが。

「……」

 豊田はこの時こう考えた。

(④がリーチに通る以上⑦単騎が優秀なのは間違いない。だが、3は危険を感じたから止めた牌だ。その自分の感覚を信じるべきではないか。少なくとも単騎で反撃するために押す牌ではない。さっきとは違い今は確実に財前プロが張っているわけだし、ここは危険を回避する方を選ぼう)

打⑦

豊田手牌
一一二二三三⑤⑤⑨⑨113

マナミ
三-六-九待ち

豊田
3待ち

その⑦をメグミがさらに鳴く。

「チー!」

メグミ手牌
伍六七③④566678(⑤⑥チー

打8

メグミ②-⑤待ち

 3人が同巡にテンパイを入れた。豊田はこの最終節でグングンと順位を上げていた。つまりこの3人は結果次第で昇級ラインに入るかどうかが左右される3人なのだ。(大上はもう圏外なのでじっとして邪魔をしないようにしていた)
 運命の局。その最終局面に昇級をかけた選手達が今ぶつかり合う…!


 そして


「ツモ」
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