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第九局【新世代編】

6巡目◉ユウの人心掌握術

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「あなたたち3人はプロとして働き始めているので私から大切なアドバイスがひとつあります。心して聞くように」

「なにかしら。そんなに大切なこと?」

「ええ、最強になるには必ず知っておかなければならない知恵よ」

「…そんな大層な知恵を授かっちゃえるの? ユウだけのものにしておけばいいじゃない」

「マナミ、私たちは全員で応援し合って生きていく、共に頂を目指して戦っていく、そういうグループでしょう」
「そうだったわね」

《何でしょうね。私も気になります》

(なんだろね)



 佐藤ユウは人の気持ちを感じ取ることに長けている。後に女賢王と言われるようになるだけあり、人の心をコントロールすることが出来る女だった。そのユウがカオリたちプロ雀士に教えてくれた非常に簡単なたった一つの鉄則があった。それは


「今後、プロとして打っていく上で気をつけて欲しい事。それは『いま目の前にいる雀士だけを褒めろ』ということ」

「?」

「わかりやすい話が「~さんって強いよね」とか言うここに居ない人を褒める話題をしないということ。その『~さん』というのが仮に最強と言われる雀士であろうとダメ。プロ雀士は誰でも自分が一番最強だと思っていたいの。いかにまだ未熟であろうとも自分を差し置いて他の誰かが強いという話題をされたら(オレだって強えっつーの、なめんなよ)と思われて好印象にはなり得ないわ」

「なるほど」

「逆を言えば、目の前にいるその人を褒めてあげると急に仲良くなれる。プロ雀士というのは誰しも承認欲求の化け物なんだから。少し麻雀の内容を褒めてやればあっという間に味方として取り込める」

 そして味方になった人というのは、さもフォローバックをするかのようにこちらの事も褒め称えてくれるものだ。それが一つ、また一つと増えることで力になる。つまりは『多数の人物に認められている人』という力を得る事になる。そうなれば戦う前から上位にいるのと同じ。常に自分有利で戦いやすい状況を生み出せるのである。

「思っても無いことでもいいから絞り出してでも褒めて『支持者』という自分の力を増やしていくの。そんなに難しい話じゃないわ」
 
『組織の頂点を獲るつもりなら目の前の1人を褒めていけ』

 これが未来の麻雀界の先導者となる女賢王ユウの人心掌握術なのであった。
 
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