麻雀少女青春奇譚【財前姉妹】~牌戦士シリーズepisode1~

彼方

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第九局【新世代編】

5巡目◉全局オーラス打ち

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「ミサトー。ハーゲ○ダッツあげるー」
「えー、いいの?」
「クジで当たったから」

 コンビニの商品を600円以上買うと引けるクジでマナミはハーゲンダッ○を当てていた。相変わらず運がいい。
「ありがとー」
「私はビエネッ○買っていこーっと」

 最近は肌寒い季節も終わり、もはや少し暑いくらいの日が続いていた。カオリはちょっとあったかくなるとすぐアイスを買うという習性がある。

 今日は麻雀部に財前姉妹と井川ミサト、そして佐藤ユウが来ていた。(ユウには普通に自分の家なので来たというよりは当たり前に居る)
 まずはオヤツを広げて一休み。今日は少し休憩してから麻雀をするつもりだ。

「今日は初期メンバーね。久しぶりじゃない? この4人で打つのは」
「そうね、87年組勢揃いね」

 カオリたちは1987年生まれだ。昭和62年。バブル期の真っ只中である。

「今日はね、ミサトに守備力の高い麻雀を教わろうと思って来たの」とカオリが言う。
「私達は守ってれば昇級しそうだけど、それが出来たら苦労しないっていうか… 攻撃あるのみ! みたいな麻雀しか得意じゃないから。特に私は」とマナミ。

「はー。私達は一応同じリーグで戦うライバルなんだよ? そんな塩を送るようなこと…」
「だからさっきハーゲン○ッツあげたじゃん」
「あれはそういう意味だったわけ?」
「あ、私のビエ○ッタもあげようか?」カオリは既に食べ始めているカップアイスをスプーンに大きく乗せてミサトに「はい、あーん」と言わんばかりに近づけてくる。
「アイスはもういいわよ。だいたいそれ食べかけじゃない」
「でもこれチョコレートがパリパリしてて美味しい部分だよ。バニラとチョコのハーモニーが一番味わえる所だよ? はい」
 普段クールな表情のカオリが「食べないの?」と言うような表情でアイスを近づけてくるのはなんとも抗えないものがある。

「…もう、仕方ないなぁ」

パクッ

パリパリッ!

「…美味し…」

「はいこれで契約成立ねー。今日は守りの極意を教えてください!」

「あたしの分は?」とユウが言う。そう言えば買ってなかった。

「多分冷凍庫にスーパーカ○プあるわよ。おととい箱で買って入れといたから」とマナミが言う。
「ひとんちの冷凍庫を勝手に使って…」
「細かいこと気にしないの! いっこ食べていいから」

 こうやってオヤツを食べてくつろいでいる様子は4人ともまだ子供にしか見えない。彼女たちがまさか麻雀に人生を賭けて戦う子達だなんて誰が思うだろう。

「ふう、ごちそうさま。そしたら、守りの極意? だっけ? 仕方ないから教えよっか」

「気前いいー!」
「よっ! 新人王!」

「新人王をネタにしないの。誇らしいことなんだから」

「ごめーんねっ」

「…で、守りね。これはどのような意識で構えていればいいのかと言う質問だと考えます… なので、簡単な話。トップ目のオーラスだと思って下さい」

「オーラス?」

「そ、守り抜きたいっていうならそこから先はずっとトップ目のオーラスだと思って手組みすること。毎局よ。なので厚く構えたりせずにスリムに組んで、リーチは一切掛けないこと」

「あと8半荘もあるのに、全局?」

「守り切るってそういうことよ」

「へぁ~…」

 カオリたちはミサトに守備の極意を教わったが、実行する胆力が身につくのはまだ先になりそうだなと思ったのであった。
 
 
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