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第八局【運命の雀荘編】
6巡目◉ファーストペンギン(前編)
しおりを挟む今日もアンは麻雀部に来ている。今日は珍しくアンとユウの二人だけだ。
「今日はふたりだけだしたまには将棋でも指そうか?」
「いいですね、気分転換になりますし」
ユウはスグルの勉強机の下にある将棋盤と駒を引っ張り出した。
「私、あまり強くないから先手ちょうだい」とユウがハンデを要求してきた、それはそうだ。なにせアンはプロ棋士のいとこなのだから。
「いいですよ。でも平手でいいですよね?」
「それは大丈夫。あんまりにも勝てないと思ったらハンデもらうね」
「分かりました」
パチ
パチ
パチ
パチ
パチ
パチ
将棋を指しながらアンはユウに先日思いついたインスタントコーヒーの美味しい淹れ方を説明した。
「…てことでね。私はインスタントコーヒーでも美味しく飲めるコツを掴んだわけですよ」
パチ
「へぇ、やっぱり手間をかけた方がいいものが出来るのは麻雀でもなんでも一緒ね」
パチ
「中には最速最強とか言う人もいるけど、そんなわけないですからね」
パチ
「あれは本気では言ってないでしょ。キャッチーなタイトルで売り出したいっていう戦略なだけよね。まあ、最速最楽ではあるけど、楽な提案は人気になるのも頷けるけど最強ではないわ」
パチ
「例の麻雀ブロガーさんがこんな事を言ってましたよ」
パチ
そう言うとアンはブログを開いてユウに見せてきた。
————
××年××月××日
××時××分
投稿者:ライジン
【先制リーチについて】
ごきげんようライジンです。
今日のテーマは先制リーチ。みんな大好きリーチですが、ホントにそれリーチしていいの? ということありませんか? それについて考察してみたいと思います。
いきなり結論から言えば先手必勝は誤りである。もちろん、全てがそうではないし先手有利なケースも多数ある、特に親番は先制リーチが優位である場合が多いが、それとて全てではない。先制リーチは言うほど良いものではないと言うのが私の見解だ。
まず、単純に考えて先にリーチをすると言うことは少ない材料で組み立てたということ。
後手は後手になればなっただけ多くの材料を使って戦へ赴くわけである。どちらの手が勝利しやすいか、強い手になったかは確率的に見て後手の方に決まっている。
また、先手は自分の捨て牌しか罠に使えないが、後手は先手の捨て牌と自分の捨て牌の両方を使ってアガリやすい手を組み立てることが可能である。逆に先手は後手からリーチがされることで迷彩が無意味にされることもしばしばあるのでこういった面でも後から攻め返す側の方が勝利しやすいということになりがちである。
さらに加えて、後手はそもそも先制リーチが入っていることを知った上で対決を挑んでいるのだから基本的に勝算が高い手で対決しているに決まっている。先制親リーチに挑む場合などは特にそうだ。警戒すべきは先制親リーチより追いかけてきた子のリーチの方ということも多く見受けられる。
勝ち目の薄い対決を親に対して挑むということも普通するはずがないのだから当たり前だ。
であるのに何故これ程までに先制リーチが推されるのか。それは圧力をかけたいというような強気の理由から? 本当にそうだろうか。
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