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第八局【運命の雀荘編】
5巡目◉計算式
しおりを挟むアンは雑誌での評判などを調べた結果、やはり評判の良いコーヒー店となると東京に集中しているという事を知った。
(仕方ないか)
遠いけど上野なら通えないこともない。水戸駅までは最近通学用に電動アシスト付き自転車を購入してもらったので電車に乗らずに行けるし、そこからなら上野は特急に乗ればギリギリ1時間かからずに行ける。とは言え、特急券までは交通費として出してもらえないだろうし。現実問題遠すぎる。が、それでもアンは一度上野駅近くの喫茶店に行くことにした。とりあえずは勉強しに。どうせまだ高校に行かなければならないから引越しはできないし、何よりアンはここ水戸が大好きだから引っ越すつもりもない。
(うーん、どうしたらこの香りが出るのかしら)アンは雑誌に載っていた店に行っては研究し、それを再現できないものかと試行錯誤した。市販のもので再現しなければならないのでかなり難しい問題だった。雀荘のコーヒーは市販のもの(ほぼインスタント)を出しているだけなのだから。
(美味しく淹れれるならインスタントだろうとドリップだろうと何でもいいのよね。本格とかじゃなくていい、ただ美味しさにこだわりたい)
そして、アンはある事に着目する。
(そういえば、このインスタントコーヒーの成分って何が入っているのかしら)
そこにはデンプンが入っていた。
(デンプンは熱湯をかけるとダマになるんじゃないかしら。片栗粉はお湯で溶くとダマになるけど水ならうまく溶けるわよね)
…ということは?
実験してみる。インスタントコーヒーをまず水で溶かしてからお湯を注ぐという二段階の作り方ならどうなのか?
(ん? 気のせいかな。美味しいような気がする…)
「ねーママー! ちょっとこれ飲んでみてー」
「んー? 何よ」
「コーヒー淹れたんだけど」
母親に飲んでもらった。すると。
「…あら、ずいぶん本格的に淹れたのね。香りがいいわ」
「これ、インスタントなんだよ」
「ええ? 嘘よ。そんなはずは…」
「やっぱりこの式で正解だった!」
コーヒーも麻雀も『式』が大事ということに気がついたアンであった。
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