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第七局【新人王編】

16巡目◉本戦開始

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「マナミとミサトは通過したわね! 凄いじゃない! 3人中2人が予選通過なんて。ざっと数えても100人いるうちのベスト16よ? たいしたものだわー」とメグミが私たち麻雀部を褒めてくれた。
「ありがとうございます♪」
「カオリも惜しかったわね、19位だってなかなかのもんよ。新人とは言え全員プロなのにその中での19位は悪くないわ」

「はい、ありがとうございます」
(って言われても、やっぱり悲しいわ。せっかく来たチャンス手をズルしようとしたせいで自分で潰して…… 挙げ句放銃だもの。最低よ)
《もう、これ以上落ち込むのはやめなさい。あなたは自分で自分を律して自力で勝とうとしていたじゃないですか。私の助言はいらないって言って。偉いですよ。カオリはそれだけで充分偉い。これ以上落ち込むのは許しませんよ。ね、神がもういいって許してるんです。カオリ。いい加減自分を許しなさい》
 珍しくwomanが饒舌になるのでカオリは従うことにした。神さまにこんなに心配させちゃいけないな。と思ったのだ。

 さて、来週行われる本戦は広い会場で行われ見学自由だ。もちろんカオリもメグミも応援に行くと言いたい所だけど『ひよこ』のオーナーがなんて言うか。最近休みをもらってばかりだからたまには出勤しろって言われたらそれまでだ。だけど。
「いいよ、カオリちゃんはおれの分も応援してきて!」と快く許可してくれた。しかし、メグミは『ひよこ』に出勤してと頼まれていた。

「ありがとうございます!」

 カオリはマナミとミサトの自分とは違った強さを持つ麻雀を勉強させてもらおうと思った。普段の部活動では見れない本気の2人を見たい、と。
《勉強熱心ですねカオリ。私から見たら力量レベルは3人の中ではカオリが1番高いですよ。まあ、基礎もとが優秀な佐藤優さんにはまだ敵いませんが》
(ええ? そんなわけないよ)
《いいえ、確かです》
(ほんとにい?)
《相手の力を知るには相手より強いことが条件です。自分より強い人の力は計れないんです。なので私は神さまですからほぼ全員わかるし。カオリだって少しずつ相手の力量がわかるようになってきてるはずですよ》
(ええ、わかんないよそんなの)
《いずれ、分かる日が来ます。あと、自分のことを強いと見抜かれたら気をつけることです。その人はきっと、カオリより強いから》
(それは、大丈夫。私、自分が強いとか思ったことないから。慢心とか。したくても出来ないし)
《ふふ、カオリはそれでいいのかもしれないですね》

 
————

そしてきたる新人王戦本戦の日。

 その日も相変わらず3人は会場まで仲良く一緒に行った。これから数時間後には本気で潰し合うことになるのに、お喋りはいつも通りだ。

「私が新人王になったら1年間はみんなにキングって呼ばせて遊ぼうかしら」とくだらない事を言っているのはもちろんマナミだ。
「それ、いいの? なんか恥ずかしくならない?」
「なんでよ、キングって王様よ? 誇らしいじゃないの」
「まあ、マナミがいいならいいけど」
「ミサトはなんか無いの? 新人王になったらしたいこと」
「そーねぇ。考えとくわ」

————

会場到着

 3人でのんびり話しながら歩いてたら気付いた頃には時間がギリだった。
 慌てて卓に着く2人。カオリはとりあえず待ち席に座る。

「それでは全員揃いましたので新人王戦本戦を開始致します! はじめて下さい!」


「「よろしくお願いします!!」」
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