127 / 297
第七局【新人王編】
14巡目◉私たちの掟
しおりを挟むミサトとマナミは大会1回戦2回戦を順調に勝ち予選突破の勢いを見せていた。カオリも悪くない成績ではあった。しかし、3回戦カオリはミサトと同卓になってしまう。
(ミサトと対局か… ついてないわ)
《仕方ないですよ、いつも通りやるしかありません》
(そうね)
対局前はとくに会話はしなかった。プロ対局というのはそういうもので対局相手と仲良くお喋りなどは御法度なのである。
無言の空間で集中力を高めている選手たち。ピリッとした空気がそこにある。ここに集まった人間は少なくとも会費を支払ってまでして1日を潰してお金も動かない麻雀をしに来てる。つまり、人生を賭ける覚悟でここにいる。それほど真剣な戦いなのだ。友達だからってお喋りしてていい空気ではないし、それこそがプロの作法だと言える。
「「よろしくお願いします!」」
同卓者たちは中々に手強く、攻めても攻めても空振りで流局が多かった。しかし、南2局についにカオリに勝負手が入った。
カオリ手牌
二三四伍六⑤⑥⑦56777 ドラ4
リーチして高目をツモれば一気に浮上だ。しかも待ちは山にごっそり残っていそうな3面待ち。親番はミサトだがここは容赦なく3000.6000を目指してリーチとする。
すると、このリーチに対してミサトが反撃してくる。ミサトは持ち点がへこんでる南場の親番だしそれは当たり前だった。そして打たれる打一。
「ロン」
「2000」
「はい」
もちろん見逃してツモにかけた方がいい結果になりそうなのは分かってる。跳満チャンスなど赤なしの競技麻雀では非常に貴重だ。特に今回のように山に残ってそうな待ちなら見逃しツモにかけるという選択はおおいにアリだった。だが、カオリたちは決めていた。
『友人間でのリーチ後の見逃しは決してやらない。むしろ潰し合うつもりでやる』と。
これが、カオリ達が決めた掟なのである。例えどんなに戦略性のある見逃しであろうと友人間では行わないと。そうしなければ、グルになっていると思われたらつまらない。理解してもらえなかった場合が大変になるだけなのでリーチ後は必ず当たる。そういう決めだった。
(うわ、ド安目に打っちゃったか… カオリ、邪魔してごめんね)とミサトはこの手を見て思ったという。
(勿体ないけど、これは掟。仕方ないわね)
《そうです、カオリ。よく躊躇なく倒しましたね。それでいいんですよ。チャンスでしたけど、友人であるミサトさんから出されたなら当たらないといけない。これが出来ないと色んな言い掛かりをつけられることになりかねませんから。倒して正解です》
3回戦はミサトも親番を蹴られたのでそのまま浮上出来ずマイナスしたし、カオリも跳満チャンスを2000で仕上げたのでマイナスした。それが響いて4回戦に大変な条件になってしまうのだが、それでいい、それで仕方ない。と、納得する2人だった。
10
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説


麻雀少女激闘戦記【牌神話】
彼方
キャラ文芸
この小説は読むことでもれなく『必ず』麻雀が強くなります。全人類誰もが必ずです。
麻雀を知っている、知らないは関係ありません。そのような事以前に必要となる『強さとは何か』『どうしたら強くなるか』を理解することができて、なおかつ読んでいくと強さが身に付くというストーリーなのです。
そういう力の魔法を込めて書いてあるので、麻雀が強くなりたい人はもちろんのこと、麻雀に興味がある人も、そうでない人も全員読むことをおすすめします。
大丈夫! 例外はありません。あなたも必ず強くなります! 私は麻雀界の魔術師。本物の魔法使いなので。
──そう、これは『あなた自身』が力を手に入れる物語。
彼方
◆◇◆◇
〜麻雀少女激闘戦記【牌神話】〜
──人はごく稀に神化するという。
ある仮説によれば全ての神々には元の姿があり、なんらかのきっかけで神へと姿を変えることがあるとか。
そして神は様々な所に現れる。それは麻雀界とて例外ではない。
この話は、麻雀の神とそれに深く関わった少女あるいは少年たちの熱い青春の物語。その大全である。
◆◇◆◇
もくじ
【メインストーリー】
一章 財前姉妹
二章 闇メン
三章 護りのミサト!
四章 スノウドロップ
伍章 ジンギ!
六章 あなた好みに切ってください
七章 コバヤシ君の日報
八章 カラスたちの戯れ
【サイドストーリー】
1.西団地のヒロイン
2.厳重注意!
3.約束
4.愛さん
5.相合傘
6.猫
7.木嶋秀樹の自慢話
【テーマソング】
戦場の足跡
【エンディングテーマ】
結果ロンhappy end
イラストはしろねこ。さん

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』
コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ”
(全20話)の続編。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211
男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は?
そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。
格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる