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第七局【新人王編】

10巡目◉私は放銃しない

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 今日はプロリーグ第2節。

「来たわね、井川プロ」
「…お手柔らかに。成田先輩」

 今節は打って変わってミサトの見せ場だった。
 ミサトは持ち前の守備力を発揮して第2節の出だし3半荘は一度も放銃しなかった。それどころか親っ被りだって2000点しかしていない。ミサト曰く「ツモられ貧乏で負けた。は、言い訳。本物の守備職人は極力ツモらせないようにコントロールするもの」だと言う。
 簡単な例を言えば自分は南家で北家からリーチを受けた。手の中には①②②③とあるとし②はリーチ宣言牌だとしたら。
 とりあえずの②落とし?いやいや、②を二連打して①の横移動狙いとするのがツモらせない打ち筋。そのくらいがまあ、高い守備力の手順だと思う。
 だが、ミサトならこの②をポンすることだろう。そして、鋭く読んでベタオリに徹する。これがミサトの守備だ。
 ①がワンチャンスであることをいち早く全員に知らせる為なら鳴いてしまうのである(ワンチャンスなら、と①を勝負してくれる人がいるかも知らないから)それにより、一発もついでに消す。これがミサト流だ。だが、それは高い推理力を持っているから詰まないという自信に裏打ちされており、誰にでも可能なものではない。

 ミサトの麻雀は本当に『私は放銃しない』という自信に満ち溢れていて格好いいのである。

 第2節のミサトは放銃ゼロのアガリ多数で怒涛の3連勝。ひとつひとつは堅実そのものだったがそれを何回も積み重ねて相手に付け入る隙を与えなかった。
 
 そして四回戦
「このまま終われない。私にも意地がある!」
 そこから成田メグミの猛連荘が始まった。

————

 一方、カオリはひたすら耐える麻雀だった。上手に打てていたが守るだけで精一杯。牌が揃わないことにはどうしようもない。
《上手く打っていますけどね。でも、この我慢が次に繋がると信じて今は耐えましょう》
(わかっているわ。こんな時もある)



 マナミは絶好調とは言えないが少しずつポイントを増やしていた。マナミは現在首位なのでそこからさらに増えているというだけで充分だった。
(よし、この調子!)


 それぞれがプライドを胸に魂を削る想いでいま対決していた。

 それが、プロリーグなのである。

 
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