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第七局【新人王編】

2巡目◉稼げるバイト

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 五明求道ごみょうもとみちがオーナーをしている『麻雀ファイブ』はレートは名前の通り0.5で、プロとは言えまだ学生のミサトにはレート1.0は高いから丁度良かった。(ちなみに、『ひよこ』のレートはソフトピンと呼ばれるもので0.5よりは高いけど低レートの部類に属するもの。ファイブのレートとあまり動きは変わらない)
 初めて行ったその日はチャラで帰れたが、ここで林彩乃から学んで行くには何度も通う必要がある。学生のミサトにそんな頻繁に通うお金があるわけは無かったしリーグ戦や大会の参加費だってどうやって稼ごうかという悩みもあった。ミサトの家はご両親が競技麻雀に理解を示してくれていて、プロ活動の費用は全て出してくれると言うのだが、そこは麻雀部いちストイックで頑固なミサトが甘えるわけがなかった。
「自分でなんとかするから、大丈夫。パパとママは応援だけしてて」と相変わらずだった。しかし、ミサトはそれじゃあどうやってお金を工面するのかと言われると思い付かなくて困っていた。
『ひよこ』はムリだ。もう人員は足りている。これ以上バイトが増えては今いるバイトの稼ぎを減らすことになる。そもそもカオリやマナミだって本来なら1人でやる労働時間を分けて半分ずつ稼いでるのだ。これ以上の分割は誰一人として満足する金額を貰えなくなる。
 かと言って他にある雀荘はセット雀荘しかなくて水戸のフリー雀荘はここだけだ。セット雀荘は店主1人で営業するのが基本形で人員募集など絶対にしてない。
 どうしたものかと頭を悩ませているミサトはとりあえず今日は『ひよこ』で勝って稼ごうとした、しかしその日は相手が悪かった。店内いちの勝ち頭、小宮山ハジメとの同卓である。


「ツモ!」

 小宮山が珍しく大きな声で発声した。それだけで手牌を開ける前からみんな察していた。これ、ヤバいやつだ。と。

南南北北西西西(七八九)(東東東) 南ツモ

「16000オール」

「……しょ、小四喜ショウスーシー…」
 青ざめながら口をパクパクするミサト。
 15900点持ちだったミサトはきっちり100点不足で飛ばされた。

「こんなに盛大に負けたらもう、次をやる軍資金がありません。急ですみませんけど、これで終わりにさせて下さい」
 そう言って悔しそうな顔をしたミサトは立ち上がった。

 とぼとぼと店を出るミサト。

「じゃあ、お開きだな! おれも帰るよ!」と言い小宮山も席を立つ。
「コミさんはもう少しやっていきなよ!」とマスターが言うが「ヤダよ。疲れたし。役満を和了アガって気持ちいい所でやめるのが丁度いいだろ。可愛い女の子も帰っちゃうしな!」と言う。
「おまえが帰したんだろが」とツッコミを入れるマスターは怒ってはいないが不満げではあった。

「じゃ、またな!」
 大きめの胸ポケットに勝ち分をゴッソリ突っ込んで小宮山も店を出た。

 エレベーターでミサトと小宮山は一緒になる。

「なあ、井川さんだっけ? キミ途中までそんなに負けてなかったのに役満一発でパンクしちゃって… お金困ってるなら俺がいいバイト紹介してもいいよ。キミならきっと稼げると思うよー」
「どっ、どんなお仕事ですか? 詳しく教えて下さい!」

 リーグ戦参加費やアヤノのいる店に打ちに行くことなどお金が必要なミサトは小宮山の話に勢いよく食いついたのだった。
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