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第六局【規格外の新人編】
17巡目◉アカネとメグミ
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17巡目
◉アカネとメグミ
杜若アカネは杜若家の次女で小説が好きな子供だった。特に好きなのは推理小説で探偵ものには目がなかった。そんな小学生だったので少々変わった子だと思われたに違いない。ある日、何を思ったかホームセンターに行った際に乾電池をポケットに入れてレジを通さず持ち帰ってしまった。それは無意識のうちの万引きだったが、この時こう思ってしまった。
(万引きって気付かれないんだな)と。
そして、それ以来(探偵練習ごっこ)と称して、やれ針金を万引き。やれボルトを万引き。と必要のないものを(名探偵ならこのくらいやってのけるはずだ)というよく分からない理由で窃盗した。
しかし、それが何回か成功してエスカレートし、次は下州屋という釣具店でフライフィッシングの疑似餌セットを盗もうとした。…が。
「ちょっと来てもらおうか」
店長と思われる人物に腕を掴まれる。
「ポケットの中、見せて」
「…はい」
アカネは素直に降参して疑似餌セットを出した。
「これだけで全部?」
「全部です」
「いま警察呼ぶから。あとは警察の人に任せるから、この部屋で反省して待ってなさい。私は忙しいからもう店番に戻るけど、二度とやらないように!」
「…はい」
数十分後
お巡りさんが到着する。アカネは近くの派出所に連れて行かれた。
「なんであんな必要ないものを盗もうとしたのかな?」
「…探偵ごっこでした」
「え?」
「名探偵に憧れてて… 探偵ならあれくらいわけなく盗み出しそうだなって」
「…呆れた、それは探偵じゃなくて怪盗じゃないか。敵だよ敵」
「あ、そう… でしたね」
「まぁ、今から親御さん来るから充分反省して、二度ともうやらないなら何も記録はつけないから」
「ごめんなさい。ありがとうございます」
15分後
お母さんが来た。
「アカネ!! なんてことしたの! なんで!?」
「ごめんなさい」
「まぁまぁお母さん、この子の動機はちょっと。まあ。よくはないんですけど、うん。反省はしてるし、きっと二度とやりませんから」
「申し訳ありませんでした!」
「ごめんなさい」
「はい、じゃあもう二度とやらないね?」
「はい!」
「じゃあいいよ。さようなら」
——————
—————
———
——
その後、高校生になった杜若アカネは麻雀と出会い。推理モノに目がないアカネは麻雀のゲーム性にハマる。夢中で麻雀を勉強するようになり、仲間内では男子より強くなるのはあっという間だった。
高校卒業をしたら麻雀プロになりたいと両親に打ち明けるも「まだ決めるのは早いから大学へ行ってみてしっかり考えてから決めたらどうだ」と言うので学力の高いアカネは一流大学へ進学した。
月日は流れて杜若アカネ22歳。両親の望むような大学へと行ったものの麻雀への熱は冷めず「やっぱり麻雀プロになりたい!」という結論がブレることはなかった。結局、大学四年かけてもやりたい事は変わらなかったのでもう両親も諦めた。
「わかった、アカネの好きにしなさい」
杜若アカネは22歳で麻雀プロになる。
————
アカネがコンビニに立ち寄ったら丁度中学生くらいの子が万引きをしようとしてる現場に遭遇した。
「やめなさい。どうしても必要なら私が立て替えてあげるから」
「っち! ウゼェな! 関係ねーだろ! 誰だよアンタ」
「私も昔やったから。こんな後悔はさせたくない」
「……」
「私には4つ歳上の仲の悪い姉がいるんだけど、万引きして捕まって帰ったとき思いっきりぶたれたわ」
「そりゃそうだろ」
「でもね、お姉ちゃん、その時泣いてた。『アンタなんてことしたの。母さんがどれほど傷ついたと思う?! アンタのこと、とっても信頼してたのに!』って言って。『私だって信頼してたのに…』って……。お姉ちゃん泣いてた」
「…」
「取り返しのつかない事したんだって思ったわ。そこでやっと自分の想像力のなさに気付いたの」
「…フン。ウチの親はそんなんじゃねえし」
「本当にそう? 誰か傷付けてからじゃ遅いんだよ? ねえ、こんなことするなんて毎日つまらないんでしょ? つまらないなら私が最高の遊びを教えてあげるから」
「はあぁ~?」
「私と、麻雀をしようよ。あなた名前は? 私は杜若アカネ」
「……氷海メグミ」
こうして杜若アカネに弟子が出来た。これが後に日本プロ麻雀師団で新人王決定戦準優勝を2回取り実力派新人女流と騒がれることになる成田メグミとの出会いであった。
◉アカネとメグミ
杜若アカネは杜若家の次女で小説が好きな子供だった。特に好きなのは推理小説で探偵ものには目がなかった。そんな小学生だったので少々変わった子だと思われたに違いない。ある日、何を思ったかホームセンターに行った際に乾電池をポケットに入れてレジを通さず持ち帰ってしまった。それは無意識のうちの万引きだったが、この時こう思ってしまった。
(万引きって気付かれないんだな)と。
そして、それ以来(探偵練習ごっこ)と称して、やれ針金を万引き。やれボルトを万引き。と必要のないものを(名探偵ならこのくらいやってのけるはずだ)というよく分からない理由で窃盗した。
しかし、それが何回か成功してエスカレートし、次は下州屋という釣具店でフライフィッシングの疑似餌セットを盗もうとした。…が。
「ちょっと来てもらおうか」
店長と思われる人物に腕を掴まれる。
「ポケットの中、見せて」
「…はい」
アカネは素直に降参して疑似餌セットを出した。
「これだけで全部?」
「全部です」
「いま警察呼ぶから。あとは警察の人に任せるから、この部屋で反省して待ってなさい。私は忙しいからもう店番に戻るけど、二度とやらないように!」
「…はい」
数十分後
お巡りさんが到着する。アカネは近くの派出所に連れて行かれた。
「なんであんな必要ないものを盗もうとしたのかな?」
「…探偵ごっこでした」
「え?」
「名探偵に憧れてて… 探偵ならあれくらいわけなく盗み出しそうだなって」
「…呆れた、それは探偵じゃなくて怪盗じゃないか。敵だよ敵」
「あ、そう… でしたね」
「まぁ、今から親御さん来るから充分反省して、二度ともうやらないなら何も記録はつけないから」
「ごめんなさい。ありがとうございます」
15分後
お母さんが来た。
「アカネ!! なんてことしたの! なんで!?」
「ごめんなさい」
「まぁまぁお母さん、この子の動機はちょっと。まあ。よくはないんですけど、うん。反省はしてるし、きっと二度とやりませんから」
「申し訳ありませんでした!」
「ごめんなさい」
「はい、じゃあもう二度とやらないね?」
「はい!」
「じゃあいいよ。さようなら」
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その後、高校生になった杜若アカネは麻雀と出会い。推理モノに目がないアカネは麻雀のゲーム性にハマる。夢中で麻雀を勉強するようになり、仲間内では男子より強くなるのはあっという間だった。
高校卒業をしたら麻雀プロになりたいと両親に打ち明けるも「まだ決めるのは早いから大学へ行ってみてしっかり考えてから決めたらどうだ」と言うので学力の高いアカネは一流大学へ進学した。
月日は流れて杜若アカネ22歳。両親の望むような大学へと行ったものの麻雀への熱は冷めず「やっぱり麻雀プロになりたい!」という結論がブレることはなかった。結局、大学四年かけてもやりたい事は変わらなかったのでもう両親も諦めた。
「わかった、アカネの好きにしなさい」
杜若アカネは22歳で麻雀プロになる。
————
アカネがコンビニに立ち寄ったら丁度中学生くらいの子が万引きをしようとしてる現場に遭遇した。
「やめなさい。どうしても必要なら私が立て替えてあげるから」
「っち! ウゼェな! 関係ねーだろ! 誰だよアンタ」
「私も昔やったから。こんな後悔はさせたくない」
「……」
「私には4つ歳上の仲の悪い姉がいるんだけど、万引きして捕まって帰ったとき思いっきりぶたれたわ」
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「はあぁ~?」
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