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第六局【規格外の新人編】
7巡目◉勝負師の顔
しおりを挟むマナミはよく知った顔と同卓だった。マナミ達のアルバイトしている雀荘『ひよこ』で平日の昼間だけ働いているベテラン女流プロの成田メグミが同卓だったのである。
「マナミちゃん。シャキッとした服装も似合うわねえ」
「ありがとうございます。今日はよろしくお願いします」
「お手柔らかにねえ。まあ、私は本気出すけど」
「私も本気でやるしか能がないので。本気でやらせてもらいます」
すると成田メグミはハハハ! と笑った。屈託ない笑顔に眼光だけ鋭く光らせて。
「いいわよ。お手柔らかになんて、そんなことするわけないし。プロリーグは本気だけを出す場所だものね」と言う。なんてことない会話ではあったが、この時の成田の雰囲気にマナミはゾッとした。
(本気だ)
いつもニコニコしてお客さんに『メグちゃん』と愛称で呼ばれて愛されている成田の勝負師の顔を初めて見た。
(今更だけど、やっぱりメグミさんはプロなんだ。こんな顔を見せるなんて)
気圧されそうになる心を奮い立たせてマナミは勝利宣言をかますことにした。やる事が大胆なのはマナミの良さである。
(ヨシッ!)
「私はデビュー戦を必ず勝利で飾ります。今日私と当たったのは不運でしたね」
「ふっ、生意気ね。プロの厳しさを知ることになる最悪なデビュー戦にしてあげるわよ」
「勝負!」
————
———
——
—
「まいった」
負けたのは成田の方だった。
「マナミちゃん。いや、財前真実プロ。あなたはこんな階級にいる女じゃないようね。さっさと昇級して上位リーガーになりなさい」
「メグミさんも強かったです。何度も危ない場面があった。今日の私はちょっと勘が良かった。それだけです」
「それが、重要なんじゃない。あーあ、私だっていい手が沢山来てたのにな。これだけのチャンスを与えてもらってトップが一回も取れないようじゃ今期も昇級は難しいかな。あなたはこのポイントをムダにしないで、ノンストップで昇級しなさいよ。下位リーグにいられたら迷惑だからね」とメグミは苦しそうに笑う。本当は悔しくて仕方ないのだ。メグミだって、誰かに負けるつもりは毛頭ない。まして後輩には負けたくなかった。
(メグミさん、なんて辛そうな笑顔をするんだろう)
プロ対局で勝つっていうのは相手の心臓を握りつぶすようなことなんだと、マナミはその時思ったと言う。
「「ありがとうございました!」」
財前マナミ
一回戦1
二回戦1
三回戦1
四回戦2
③①⓪⓪
トータルスコア+238.1P
暫定首位
こうしてマナミは三連勝からスタート、連対率100%というセンセーショナルなプロデビューを飾ったのであった。
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