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第伍局【少女たちの挑戦編】
7巡目◉経営陣の掟
しおりを挟むその頃、佐藤ユウはアマチュアの参加可能な麻雀大会にさっそく申し込みしていた。相棒のアンはまだ年齢的に参加できないし財前姉妹やミサトはプロ予選からの参加なのでアマチュアのユウと同じようには参加出来ない。プロはプロだけで別日に予選が行われて勝ち上がらなければならないのだ。なのでユウは麻雀部ではひとりきりの予選参加となった。
(予選会場は上野かあ。遠いけど乗り換えはないから行きやすくて良かったあ)
こうしてユウはひとり、夢への第一歩を踏み出すのであった。
————
泉テンマは納得できなかった。
ここは麻雀『牌スコア』
前日に成績が良くないスタッフを守れというミーティングをしたその舌の根も乾かぬうちに3卓6入りの指示を出すオーナーにテンマは辟易していた。3卓6入りとは。卓が3つ稼働していて、そこにスタッフが6人入って卓を回しているということ、つまりは2卓2入りで充分なのである。
なぜオーナーがそんな事をするかと言うとスタッフからもゲーム代は巻き上げるシステムだからだ。店の人間であれゲームに参加してればゲーム代は払ってもらうというのがこの業界の常だった。しかし、だからと言って3卓6入りのようなあまりに露骨なことはしないのもまた経営陣の掟である。まして、前日のミーティングで負けてしまうスタッフを守りましょうとか言ったなら尚更だ。
テンマは決して負けていなかったが、このオーナーのやり口が気に入らない。こんな所で働いてたら自分もオーナーの食い物にされるだけだと思っていた。
そんな中、それでも歯を食いしばって働いたが、ある日オーナーが自分の身内を3人連れてきて4卓8入りに伸ばした。いま、2卓丸で平和に回してる所からである。
テンマはついに堪忍袋の緒が切れた。
「ヒカリさん。悪いけどおれやめます。いまはツイてるけどいつか不調が必ず来る。その時に全然守ってくれない店では働いていけない。今日までありがとうございました。今月の途中までの給料分は今レジから貰っていきますので」
「おっ、おい待てよ泉!」
レジに85000円と記帳するとレジ金を引っこ抜いて泉テンマは去っていった。本当は90000円弱あるのは知っていたが、約5000円は突然辞めることでかける迷惑料として置いていくことにした。
前々から不満を店長には伝えていたのでテンマが突然辞めたことを誰も不思議には思わなかったしオーナーにはいいお灸になった。1番テンマを可愛がっていた賎機ヒカリはガッカリしていたが、その反面、(よくやってくれた)と賎機含むスタッフ全員が内心ではテンマに感謝していた。
以来『牌スコア』は無茶苦茶な卓伸ばしをしてまで売り上げを上げるという邪道はやらないようになったという。
その後、テンマは少しためた貯金を持ってしばらくの間ふらっと一人旅を楽しむことにした。
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