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第三局【付喪神編】
15巡目◉アイリスラーメン
しおりを挟むお詣りを済ませた麻雀部一行。よく見たらスグルがいない。
「あれ? お兄ちゃんいない」
「はぐれたの? 子供じゃあるまいし」
「私達は子供だけどね」
「じゃあ私達が実ははぐれたってこと? 1対9だけど」
「いやそれは変でしょ」
と話していたらスグルが現れた。
「どこ行ってたの? お兄ちゃん」
「ちょっとこれ買ってた。ほらお前も」
それは学業のお守りだった。
「受験生の分は買ってきたから、3年生のみんなは頑張れよ!」
「ありがとうございます!」
カオリはもう神様の存在は信じざるを得ないのでこういうアイテムは本当に嬉しかったし、信仰心ゼロのミサトも、そうは言ってもお守りを渡されればその気持ちが嬉しかった。
「お兄ちゃんったらホンっとイケメンなんだから! ありがとうね」
「おう、じゃあそろそろ腹減ってきたしなんか食うか!」
するとミサトがケータイを開いて地図を見せてくる。
「実はココに行ってみたいなっていうお店があるの。『アイリスラーメン』って言うんだけど」
「住所はみやなか7丁目…… ちょっと遠いんじゃない?」
「ま、いいんじゃない? 少し歩いて疲れた方がお腹もすいて美味しく食べれるわよ」
「ミサトはタフだからなあ。でもまあそれもいいか! 歩こう」
場所を知らない状態で歩くのはけっこう時間がかかった。
「あ、見てミサト。あれの読み方『みやなか』じゃなかったみたい」
見てみると交差点の名前にKyucyu-Koban-Maeとある。きゅうちゅうこうばんまえ。
「あーー『宮中』ってきゅうちゅうだったんだ」「神様がすぐそこにいるからだね」
一行はそんな事を話しながら歩く、そろそろ疲れたな。まだかな? 道はまっすぐ行くだけだと思うんだけどなぁ。と思っていたら……
「あった! あれだ」
今歩いている道の先。道が左に曲がるカーブになっている所にアイリスラーメンはあった。探しながら歩いたから遠い感じがしたが場所を知ってしまえばそんなに気になるほどの距離ではなさそうだと思った。
10名は多いので2カ所のテーブル席に案内された。店内はとてもきれいでラーメン屋というより小洒落た焼肉屋に近い作りだった。
「ミサトはよくこんな良いところ知ってたわね」
「せっかくみんなで初詣に行くんだから美味しいものを食べに行きたいなって思ってずっと調べてたのよ」
カオリはチーズトマト坦々麺を麺大盛り辛さ2で頼んで焼き餃子もつけた。もう、お腹がかなり空いていたし食べ切れなければマナミにあげちゃえばいいやと思っていた。マナミはラーメンが大好きでいくらでも入る。
「どうぞ、お冷です」と店員さんが出してくれた水はレモンが入っていてとても美味しかった。
「はい、チーズトマト坦々麺辛さ2と焼き餃子ね」
「……おいし!」
麺は辛い味付けにチーズが入り、それが丁度いい具合に辛味をマイルドにしていていくらでもいけた。焼き餃子は焼き加減が絶妙で皮がパリパリとして美味しい。
普段はスープを飲まない派のカオリだったがこのスープは飲み干した。スープを飲み干してからふと(このスープにライスを入れても良かったな)と思ったがもう飲み終えていた。
美味しすぎてみんな無言だった。ずいぶん早く食べ終えてしまったなと思ったがみんなももう食べ終わろうとしてた。全員完食だ。スープもない。
「ごちそうさまでした! たいへん美味しかったです!」
会計はスグルが持ってくれた。今日のスグルはいつになく太っ腹だ。
アイリスラーメンの店主は満足そうにして帰るカオリたちをとても嬉しそうに見送った。
————————————————————
ちなみに、アイリスラーメンは実在するラーメン屋さんです。店主さんの許可を得て載せています。
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