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第三局【付喪神編】
5巡目◉womanの正体
しおりを挟むカオリはまだ中学生の頃に道端で麻雀牌を拾ったことがあった。
「綺麗……」(これ、麻雀牌ってやつかな。真っ赤で、宝石が付いてて。素敵だな)
「あ、あった! ゴメンそれ僕の!」そう言ってる人は細くて真面目そうな青年で、麻雀牌を落としたのが彼だというのがカオリには意外だった。
「キーホルダーだったんだけどとれちゃったか。気に入ってたんだけどな」
たしかに、よく見るとその牌の上部にはネジ穴のようなものがあいていた。
「お嬢さん、さっきそれじっと見てたけど、気に入ったのかな? 壊れちゃったので良ければあげるけど」
「いいんですか!?」
「うん。それがきっかけで麻雀に興味を持つ子が増えたりしたら僕も嬉しいし。一応とれたチェーンもあげとくね。大事にしてあげて」
「ありがとうございます」
「うん、いいよ。やっぱり宝石は男が持つより女の子にこそ似合うしね。きみに貰って欲しいってきっと牌も言ってるさ」
そう言って麻雀牌の落とし主は去っていった。
カオリは接着剤を使ってキーホルダーを直し、ウエットティッシュで丁寧に拭いた。それを自分の部屋の電気スタンドにぶら下げて毎日ホコリを払ったり拭いたりして大切にした。
とても気に入っているので持ち歩いたりはしなかった。落としたら大変だ。事実、前の持ち主は落としたわけだし。
何年も何年もカオリはその牌を大切にした。
ダイヤのような宝石が入ったその牌の名称は
『赤伍萬』
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南4局
最終局のサイを振る。トップ目に立ったカオリの親番なので何があってもこの1局がラストチャンスだ。
1と2の3
「トイ3か」
カオリが対面の山から配牌を取る。ドラは②
第1ブロック
伍19①
《配牌悪そうね。いきなり1、9牌が3枚もあるなんて》
(あ、woman。今回は現れるの早いね)
《あなたが引いたからよ、まだ分からないのかしら》
引いたから? どういう意味だろうか。
第2ブロック
白六九西
《リャンメンターツが出来たけど、ひどいわね》
(まだ分からないよ、役牌重ねるかもだし)
第3ブロック
中発③5
(役牌重ならないなー、増えたけど)
《いや、カオリ! これあと1枚ヤオチュウ牌引けたら九種九牌で勝ちよ!》
(そっか! チョンチョンで1枚引けばいいのね! よーし!)
カオリの右手にオーラが集中する。骨まで焼き尽くすような青の炎にも似たオーラがカオリの指先から尖っていた。
《あ! ダメよそんなに『気』を使っては! いつも通りに引いて! そんなにしたら…》
とwomanは言おうとしたがもうカオリは引いていた。
チョンチョン
伍伍
《ほらやっぱりーーー! そんなに『気』を乗せたらそうなっちゃいますよ》
(どゆこと)
《まだ分からない? 私はwoman。あなたがとてもとても大切にしてくれた赤伍萬の付喪神よ》
(あ、あーーー。あーーあーーなるほどハイハイ。それ言ってよね早く)
《ウーマンだってヒント出してたのに》
(私はナゾナゾとか苦手なの!)
オーラスのカオリの配牌は
伍伍伍六九①③159西白発中
というかなり重い配牌になった。
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