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第二局【カオリ覚醒編】

13巡目◉ミスリード

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「なに、カオリってプロ目指してたの?」とミサトが言う。
「うん、実はね。でもちょっと、いま忙しいからその話はあとででいいかな」
「それは私も。うん、あとで聞かせてね」
 真剣そのものの彼女達にとって麻雀中ほど忙しい時などなかった。

「チー!!」

 アンが勢いよく仕掛けた。5巡目に⑦をリャンメンチーだ。ドラは④。
 これを見た親のスグルはこう考えた。
(ふうん。ドラの④を待って③⑤のターツを残してたけど、どうやらそこは薄いようだ。あの鳴き方ではドラが2枚以上あると言っているようなものだもんな。諦めて③⑤は捨ててくか)そう思い③⑤を切り出す。すると……

次巡スグル
ツモ④!
(うわ! 最悪)
 思わず声が出そうになるスグル。打④としたらアンに鳴かれるかもしれないが止めたらまだ中盤なのにオリしか出来ない。親番の大物手イーシャンテンなのでそれもどうなんだと思いスグルは勝負に出た。
打④
「ポン!」
 鳴いたのはミサトだった。
(なんだって?!)驚くスグル。

「ふふふ」

 そこには(やってやった)という顔をして笑っているアンがいた。そう、アンは読みの名手だ。読めるということは読ませることも可能ということ。
 あのリャンメンチーはアンのミスリードを狙う読ませの罠だったのである。

「ツモ! 2000.4000は2100.4100!」
 ミサトの満貫が炸裂。

 アンに嵌められたスグルは親を落とし局面は南3局。ラス前まで進んでいた。
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