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第二局【カオリ覚醒編】

8巡目◉ヒロコの選択

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 やはりマナミとユウの力の前ではテンパイ速度が違いすぎていてヤチヨは頑張ってはいたがアガれない。
 苦戦する1年生達にそれでも全く容赦しない、というより油断しないのがマナミでありユウであり、つまりは勝負師であった。
 本気で倒しに行く。それでも勝負は時の運なのだから。油断なんてしていいわけない。
 何度かヤチヨはテンパイしたが和了アガリはないままオーラスをむかえた。ヒロコに至ってはまだテンパイすらしていない。
 だが、ヒロコは楽しんでいた。先輩達の和了の美しさ、強さに惹かれて自分が負けてるということを辛く思うより、単純に憧れた。こんな風に麻雀をしたい。そう思ってもはや見惚れていた。
 そんなヒロコは持ち点5000点しかなく。トップのマナミと36000点差。2着のユウとも31000点差もついていた。

点棒状況
マナミ 41100点
ユウ  36000点
ヤチヨ 17900点
ヒロコ 5000点

 もう逆転とかはほぼないなと思いつつも最後まで楽しんだオーラス親のヒロコの配牌がこれだった。

ヒロコ手牌
二二三三伍伍八⑥⑦⑦7788

ドラは中

 ドラこそないが配牌でタンヤオチートイツのテンパイをしてる!
「ちょ! ちょっと! 見て見て見て見て!! すごくないですかこれ!!」と周りで見ていたカオリやスグルを呼ぶ。まるでもう和了アガったかのような大騒ぎだ。
(おおおおおお!!)とギャラリーもざわめく。

「リーチいいい!」
打八

ギャラリーは無言で顔を見合わせた。

(そっち切るんかい!)と
 麻雀は1や9は端牌と言って使いにくい牌なため捨てられやすく和了を拾いやすい。その次に出やすい牌が2や8だ。
 そして、6などはそう簡単には出てこない牌。つまり、ここは⑥切りで八単騎に受けるのが普通なのだが。

 ヤチヨは打八として一発を回避した。後ろからヤチヨの手を見るとかなり整った配牌をもらっていて八は現物になってなくても捨てたかもしれなかった。
 そしてこれは2着までが勝ち上がりのトーナメント戦なためヤチヨが放銃するのは4から3に上がるだけで意味がない。
(そうか! ヤチヨちゃんから出ても意味ないどころか裏乗ったらトビで終わるから困るんだ! なら出にくい牌で待っている方がいいのかも!)
(これは⑥に受けたのが功を奏するのでは?)とギャラリーたちはざわついた。
 中々アガリにはならないが、ヤチヨからの追いかけリーチも入らず独壇場になった終盤14巡目……

「つも」

 ヒロコは手元に⑥をそっと置いた。

「ダブリーツモタンヤオチートイ…… 裏裏。裏が乗ったので8000オールです! アガリやめで」
 アガリやめとはオーラスの親で和了ったが連荘レンチャンはもうしないでやめるという時の申告である。点数を計算してみると8000オールは2着目だったユウをまくっていた。

「うそ?!」ユウは一撃で逆転されるとは思わなかったので衝撃のあまり声が出た。
「つもあがりにかけて良かった~」
 やはりヒロコはたまたま八切りにしたわけではなかった。意図して出にくい牌を選択したのである。たいした1年生だ。

「やられたわ」とユウはぐったりとして後ろに倒れた。

1回戦終了

Aグループ勝ち上がりは

1位通過
財前マナミ
2位通過
三尾谷ヒロコ

この2人で確定した。
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