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第二局【カオリ覚醒編】
3巡目◉大自然
しおりを挟む3年生になってもカオリとミサトは同じクラスだった。
3年生のクラスは1階なのでベランダは無いが庭があった。庭には小さな花壇と畑があり。その奥に小川が流れていた。遠くには山も見える。
(いい眺めだなあ)と窓際の席になったカオリは外を見る。
「川…。川かあ…… 山もあって…。いい風も吹いてる。麻雀したいなあ」
そう呟きながら気付けば消しゴムを握っていた。消しゴムを握っては右回転切りでパシン! パシン!
「カオリ! なに消しゴムツモ切りしてんの」
「いやあ、だって、山も川も風もあって、麻雀を連想しない方が無理じゃない?」
「山も川も前からあったし風も今日だけ珍しく吹いてるわけじゃないでしょ。落ち着いて、あれはいつもの見慣れた大自然よ」
「でも、山、川ときたら…」
「もう病気ね。これじゃダメだから今日は麻雀部に行くことにしようか? カオリの学力があれば1日くらい勉強しなくても大丈夫だものね」
麻雀部の部員達は全員それなりに成績が良かった。
全員基本的に大学進学を目指していたがそれは目的を持っているわけではなく、一応行ってみようというだけでありモチベーションは皆無だった。
それよりも麻雀がしたい。
麻雀に全てを捧げる人生にしてしまいたい。
本心では皆がそう思っていたが、安全策としてとりあえず大学だけは出ておこうという、せっかく成績はいいのだから。というそれだけだった。
そんなカオリたちに麻雀断ちなど不可能であり。発作的に消しゴムをツモ切りし。山を見ては牌山を連想し川を見ては捨て牌を連想し風を感じては風牌に思いを馳せる。この時点で財前香織はもはや骨の髄まで染まり切った麻雀打ちになってしまっていたのである。
ミサトは麻雀部のグループトークにひとこと書き込む。
「もうカオリが限界なので私達は麻雀部に今日は顏出します。せっかくだから来れる人は集まってね」
こうして、1か月半ぶりに3年生達が麻雀部に集まった。
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