麻雀少女青春奇譚【財前姉妹】~牌戦士シリーズepisode1~

第二局【カオリ覚醒編】

1巡目◉研究者カオリ

　今日は休みなので佐藤家に麻雀部員が昼間から全員集まった。
「今日は私抜きで4人でやっていいよ。私はやりたい事があるから」とカオリが言う。
「やりたい事ってなに？」
「みんなの麻雀を後ろから見てみようと思って」
　カオリは自分が一番未熟だと思っているので勉強がしたいのだ。しかしいつもは人数がギリギリなため自分もプレイヤーになるしかない日が多かったが今日はスグルを数に入れなくても５人いる。この機会に後ろから見て色々吸収しようと考えた。
　じゃあ私の後ろにおいでと全員がカオリを誘う。みんなして見られたい欲求があるとはたいした自信家たちである。そういう点でもカオリとは全然違っていた。
　時間がたっぷりあったのでカオリはその日全員の麻雀を見て回りその日のことを『香織の秘録ひろく』に書き残した。

　××年××月××日
　今日は一日かけて全員の麻雀を研究した。
　我が姉である財前真実は全局参加型のアガリ回数勝負。打点や副露フーロなどのこだわりはあまりなく何とかしてアガれないかと探る嗅覚に優れている。守りは薄いがアガリが多いのでそれが守備になっており結論として強い。

　佐藤優は展開読みの麻雀。どうしたら自分が有利になる展開が訪れるかを考えてリーチやダマや鳴きを仕掛ける。降りつつも1枚だけ押して威嚇をすることでノーテン仲間を増やしたりする。

　竹田杏奈は読みの麻雀。山にあるものを読むだけでなく相手が切るはずな牌に照準を合わせて直撃狙いで狙撃するスナイパー。点差の把握が天才的で微差で捲ることを得意とする。

　井川美沙都は攻めと守りのメリハリが効いている麻雀。門前メンゼンで大きく仕上げてリードし、そのリードを守り切る守備力もある。手数は多くないが前に出ればほぼ必ずアガリ切る。

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　…私は？　私の麻雀ってなんだろ。まだ、なにも定まってない気がする。
　でもいい、それならそれでみんなの良い所だけかき集めて、1番強い女になってやる。　

　そう密かに誓うカオリなのであった。