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第三章【一日一度はメンタンピン編】
三十二打目◉料理長
しおりを挟む「ところでお前なんでオレに大丈夫とか聞いてきたわけ?」
「自分でわかんねえのかよ。さっきの麻雀酷かったぞ」
「覚えてねえ。棄権したかったけど棄権の方法もわかんなかったし。ただなんとなく打ってやり過ごしたから」
「東1局の三元牌処理に続いて東2局のリーチのみ。それだけ見ればもうオマエに何かあったと確信できる内容だったよ」
「凄い信頼関係ですね。それだけでわかるなんて」とアヤノは心底驚いた。
「ああ、メタは麻雀オタクだから」
「お前だってそうだろ」
「メタ?」
「あ、メタは髙橋のアダ名だからアヤノさんもそう呼んでやってよ」
「そうなんですか『メタさん』ふふ、なんかかわいいかも。私、お粥作りますね。キッチン借ります」
「ありがとうね。アヤノさん」
「おい、アイス食うか? ポカリもあるから飲めよ」と、メタが買い物袋から何個かのアイスとポカリを取り出す。
「ありがとう、それ。レモンのやつもらうよ。買い物いくらした? 金払うから」
「そんなんいいよ。病人はいらんことを気にせずにゆっくり休めよ」
「でも」
「いいから!」
「…たく、お人好しが…」
「なんかいいですねえ。うちの店のスタッフの関係性とは大違いです」
と、アヤノが心底羨ましそうに言う。
コト
アヤノがお粥を置く
「ふーふーして食べて下さいね」
フー フー
パク。
「…うまっ。粥ってこんな美味えもんだったか?」
「ありがとうございます♪ 私ご飯を褒めてもらうのが一番嬉しいんです」
「しかし、なに? 虹牌はメンバー同志仲良くないの?」
「仲良くない、ですね。なんか、敵! って感じで。お客の取り合いみたいな。店長もソリが合わないし。麻雀は嫌いじゃないんだけど。疲れちゃう。辞めよっかな。なんて」
「じゃあうち来れば」
「また、お前は。オレん時もいきなり誘うし。…でもそれいいな」
「だろう? うちは虹牌と違ってフードメニュー豊富だからキッチンに1人料理に強いスタッフは欲しいとこだろ。アヤノさんは背も高くてすごくいい。この子がキッチンにいたら華やかになるし助かるはずだ。アヤノさんさえ良ければだけど。ゲホ。ゲホ」
「あんまり興奮して話しすぎるな。病人なんだから。でも、いいアイディアだなそれ。給料だってうちはこの辺りの雀荘の中では一番高いし。人手不足は未だ埋まってないから採用されるのは確実だしな」
アヤノはさっそく店長へ連絡していた。
「あ、店長、私今月で辞めます。…はい。…はい。わかりました、ありがとうございます。はい」
「行動はや!! ウソだろまだうちの面接もしてないのに!」
「無理だって言われたらメタさんに養ってもらうもん!」
「いや、弟どうすんだよ。しかもオレ寮生だし」
「とにかく、マサルに報告だ」
コテツがマサルに報告メールを打つ。
マサルからは即で採用の知らせが来た。
面接はやるけど採用は決まりということで、とのこと。
なんだそれ。さすがマネージャーとコテツの信頼関係って所だな。とメタは驚いた。
「じゃあマネージャーもいいって言ってるし来月から頼みますね。アヤノ料理長」
こうして、アヤノが来月から富士2の仲間になることが決まった。
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