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第三章【一日一度はメンタンピン編】
二十九打目◉別人
しおりを挟むメタはしばらく早番だった。
コテツが4連休を取っているのでその期間の早番の打ち子を担当してもらうためだ。
コテツの4連休なんて聞いたことがなかったが出産予定日が近かったからそのためだとみんな理解した。しかし、本当の所は初日は別の理由だった。夕方からの麻雀大会本戦に出るためである。
その日、アキラは製氷機営業の仕事を終えていつも通りに帰宅し、今日からやるというネット参加式の麻雀大会の本戦を観戦しようとパソコンを開いて準備していた。
すると、本日の参加者の欄に『南上虎徹』とあるではないか。しかも配信卓だ。
アキラはすぐに『ネットでやってる麻雀大会の本戦が動画生配信されてるから今すぐ見て。コテツ出てる』とメタに報告をした。
メタは報告を受けてすぐパソコンを開いた。
(本当だ、あいつ、出産の立ち会いで病院行ったんじゃなかったのかよ。…まあ、ネット麻雀だからどこでも出来るか)
その日は2卓丸でセットもなく落ち着いていたので仕事しながらコテツの本戦を観戦することにした。
すると、東1局
白をポンしてる下家がいるのに、まだ整っていない、まるで価値のない手からコテツは中を切る。中も発も生牌であるのにだ。
その中は鳴かれなかったがメタは気付いた。
(おかしい)と。
(コテツのやつ、なんで今あんなの切った。鳴かれたらどうするんだ。いつものアイツなら絶対に切らない。まるで別人のような雑な一打だ)
続く東2局
一二三八九③③⑦⑧⑨123
気付いたらコテツがこのリーチのみをかけていた。宣言牌は①で5巡目リーチ。いよいよおかしい。これは打③とし九の重なりを狙う手だ。こんなリーチを打つコテツなんて見たことない。
「こいつは誰なんだ」
「誰って、コテツさんなんでしょ?」とナナローが覗いてくる。
「違う!」
「なにが?」
「アイツがこんなリーチかけるわけない! アイツの麻雀は芸術なんだ。
こんなコテツはどの世界線にも存在しないし。どの時代を探したっているわけがねえんだよ!」
(間違いない。いま、アイツに何かあったんだ)
メタは心配になってコテツにメールを打った。
『どうしたんだ、大丈夫か?』
すると、コテツから返信。
『熱ある。38.8度。喉も痛え』
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