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第二章【最善の敵アキラ編】
四十打目◉一流雀士
しおりを挟むアキラは扉を開ける時はどうするのかとか考えていた。
やはり新人であるしここは元気よく、おはようございます! で入るべきか。でもそんな感じのノリじゃなかったらどうする? 結局、迷った末にモニョモニョっと聞こえるか聞こえないかくらいの声量で「おはようございます…」と言って扉を開いた。アキラのいつものテンションである。その事は誰にも咎められたりはしなかったが、後から来る人達はもっと元気に入ってきた。かと思えば無言で会場入りする人もいて、まあ決まりはないんだなと思った。
対局開始前に準備することがあって、それの一つに、牌チェックというものがある。
各々がマンズ、ソーズ、ピンズ、字牌と担当を決めて六面全部傷や汚れが無いか確認する。この牌チェックという作業でその卓の古株雀士が誰かが判明する。若手の方から率先して
マンズやります!
ピンズやります!
ソーズやります!
と担当するからだ、これはマンズ、ピンズ、ソーズ、に比べて字牌の枚数は少ないからこういうことが起こる。
決して、字牌やります! とかいうアホはいない。
「ピンズやります」
アキラは率先してピンズの牌チェックを行う。アキラの牌チェックは早くて正確だった。一枚だけ亀裂が入っている牌を見つけたので、
「これ、気になりますので交換してきますね」と⑨を新しい牌と交換した。(⑨というのは比較的亀裂や欠けが出やすい。牌全体にびっしりと彫りが入っているため強度が他の牌より低いのである)
自分だけ圧倒的に早く終わってしまったので自販機でアイスコーヒーを買う。加糖の普通のアイスありあり。さっき水も買ったけどよく見てみたらサイドテーブルには飲み物を4本くらい用意している人ばかりだ。これから5時間ほど麻雀をするのだからそのくらい用意しておくのは当たり前だった。
本当はアイスコーヒーはミルクだけ派なのだがなぜだろうか自販機でそういう缶コーヒーは見た事がない。
しばらくして準備が整う。
「それでは準備が整った卓から始めて下さい」
「「よろしくお願いします!」」
開局から親番スタートのアキラ。サイコロの目は8だった。
(左っパ)
アキラは左の山からスッと第一ブロックを取る。その取り方に一切の躊躇がなくアキラの熟練度がそれだけで皆に分かった。
後ろで見ていた立会人もその動きには(ほう)と唸った。というのも今の時代は自動配牌が主流でサイコロを振って配牌を取るという文化は昭和の時代のものなので8という目が出ても取る所を迷う人も多い。しかも8は手前からも奥からも近くなく、数えて取る人が多い数字だがアキラはノータイムでスッと取り始めたのだ。ちなみにアキラはプロテストの実技試験による所作は減点ゼロの満点を出していた。
(さすが、実技試験減点ゼロを出しただけあり動きが美しいな。この子には期待できそうだ)と立会人はアキラに注目して張り付いた。
(なんかずっと見られてんな…)
緊張しいなアキラにはちょっと立会人が邪魔だった。
「ツモ! 4000.8000」
いきなり超弩級のアガリが出た。
①②④④222白白白中中中 ③ツモ
ツモ役役三暗刻ドラ3
アキラは親なので8000の支払い。千点棒を3本五千点棒を1本で支払う。それを見ていた立会人は思う(完璧だ)と。
というのも東1局の倍満親被りはちょうどで払うのがマナー。これをいつもの8000放銃時と同じ感覚で万点棒で払って2000点のお釣りを貰ってしまうとアガった人が次局のリーチ棒を失ってしまう。
たった一局。左8を出して倍満を親被りしただけでアキラは自分が一流雀士であるということを同卓者と立会人に認識させたのだった。
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