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第二章【最善の敵アキラ編】
十九打目◉趣味
しおりを挟むアキラはバイトを掛け持ちしていた。収入が安定しない雀荘のバイトだけでは安心出来ないと考え駅ビルに入っているレンタルビデオ屋『nana』でもアルバイトをしていた。
nanaはそれなりに忙しかったがリスクがあるわけでもない確実な収入源だったのでここで働くのも嫌ではなかった。仕事は楽しくはなかったが。忙しいおかげで時間が経つのが早かったのは救いだった。楽しくない上に時間の経過が遅かったらいくらなんでもつらい。
バタバタと働いてレジを捌いていたらうつむきがちのアキラの顔を下から覗き込むようにしてきた客がいた。
「よっ! 似合うじゃん店員の黒エプロン」
コテツだった。
「あれ? 言ってたっけここで働いてんの」
「いや、知らなかったけどたまたま目に入ってね。今日は一日家でガンダル観ようと思ってたんだよ、いま旧作100円なんだろ?」と言ってコテツはガンダルのビデオをドサッとレジに持ってきた。
「ガンダルかー。おれまだちゃんと観た事ないんだよね。面白かったら感想聞かせてよ。お会計400円になります」
「オッケー。じゃあまた富士2でな」と言いコテツは400円を置いて帰った。
数日後
コテツは次から次へとガンダルシリーズをレンタルしていた。どうやら相当面白かったらしい。よく見たらリュックにもガンダルのキーホルダーをぶら下げている。あれはたしかVガンダルだ。もうそんなに先まで観たのか。
「そんなに面白いんだ?」
「面白いっていうだけでは表せないね。深い作品だったよ。少なくとも子供向けではない。とくに最初のやつ、初代ガンダルは観てて涙出るよ」
「ファーストガンダルって言われるやつね。そっかあオレも観た方がいいかな?」
「観て欲しい! 麻雀にも役立つ学びがあると思う。ガンダルから学ぶ麻雀に役立つ名言集とか作ろうと思えば作れるよ」
とコテツは熱弁する。
「出て来なければやられなかったのに! なんて麻雀そのものだろ」とコテツはゼータガンダルの主人公であるカミーの台詞を言う。
「たしかに。おれも観てみるわ」
コテツとアキラはその後ガンダルオタクとしても分かり合える友になり松戸のガンダルミュージアムに一緒に行ったりもした。ガンダルは二人にとって麻雀以外の唯一の趣味となるのだった。
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