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第二章【最善の敵アキラ編】
十七打目◉遅刻
しおりを挟むコテツが店に現れてから数週間が過ぎていた。アキラとコテツは麻雀こそまるっきり違うスタイルではあったが、だからこそお互い惹かれるものがあったのか、あっという間に打ち解けた。
ある週末の晩など2人で朝までファミレスで麻雀談義。何時間一緒にいても話しが止まらないくらいの麻雀友達になった。
コテツはアキラと同い年で調理師専門学校に通う学生だった。しかし、料理人を目指している訳ではなく美味しい料理を出す雀荘のマスターになりたいのだとか。
それはそれで調理師専門学校に通う良い動機だと言えなくもないが、実際に行ってみて感じたのは本気度の差。料理人として生きることを決意して免許を取りに来た学生と比較するとコテツの動機は軽かった。
技術の差に圧倒され、本気度の差にうろたえた。
結局、コテツは専門学校を休みがちになる。親に大金出して入れてもらっておいてどうしようもないヤツである。
これから先をどうしようと思い悩んでいる時に気晴らしに麻雀をしようと思ったが、セットだと自分と対等に打てる人はいないからフリーデビューしたこと。
役満でオーラス逆転されたのが逆に感動してしまい富士2に通うようになったことなど。
2人はまるでお互い溜め込んでいた思い出話をする昔からの友人同士であるかのように無限に会話を続けた。
気がついたら始発はとっくに出ていた。
「アキラくん大丈夫かよ。今日は彼女とデートなんだろ?」
「大丈夫、大丈夫、まだ時間あるから。帰って少し仮眠とるくらい時間あるよ」
そう言いながらアキラはその日ユリコとのデートを寝坊して1時間遅刻した。
「ごめんなさい」
「許さない」
お詫びにと回転寿司に連れて行ったら新渡戸稲造1枚じゃ足りないくらいユリコは高い皿を遠慮なく食べた。考えてみればユリコを怒らせたのはこれが初めてだったかもしれない。しかし、よほど寿司が好きだったのか食べ終えたらユリコはいつも以上に上機嫌に変わっていた。
(今度から謝る時は寿司を奢ろう)
次のデートではディズニーに連れて行く約束も取り付けることでアキラは完全に許された。
アキラはユリコの扱い方をひとつ学んだのだった。
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