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第二章【最善の敵アキラ編】
四打目◉サービスカレー
しおりを挟む雀荘に入ると店内はまるでファミリーレストランのような明るくて賑やかな空間だった。そしてカレーの匂いがした。土曜日はカレーサービスデーだと言う事で今日は偶然にも土曜日。無料でカレーが食べれるらしい。
なんというか、想像してたのとはだいぶ違う。もっと薄暗くてけむりがすごいような店内で蛍光灯がチカチカしてる中、黙々と男たちが牌を握っているのを予想していたが、店内は明るく賑やかで有線放送ではJ-POPが流れていて何よりキレイだった。
富士という昭和感の強いレトロな雰囲気を連想させる店名からは想像つかないくらい心地良い空間になっていたのだ。
ルール表は非常に簡単なことしか書いてなかったがそれがいいとも思った。要するに普通のルールだから書くことがあまりないという事。
待ち席に座るアキラに対してマネージャーは更に低くなってルール説明をしてくれた。一通りのルール説明が終わると卓に案内された。スキンヘッドの人とかもいて怖かったけど自分に付き合って0.5のレートでいいと言ってくれたから優しい人なんだと思って少し安心した。
結局2回打って3着4着とデビュー戦は惨敗。悔しいとまでは思わなかったけど、真面目なアキラはもっとこの人たちから学びたいと思うようになる。
「カレーでも食べるかい」
完全に打ちのめされたアキラを気遣ってマネージャーがサービスカレーを用意してくれる。ちょうどお腹が空いていたのでそのカレーが尚更美味しく感じた。
気付いた頃には大学へ進学する気はもう完全に失せていて、雀荘で働くための履歴書と証明写真を次の日には用意していたのだった。
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