麻雀青春物語【カラスたちの戯れ】~牌戦士シリーズepisode3~

彼方

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第一章【史上最強雀士コテツ編】

三十打目◉格言

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 花火はまだ上がっていなかったが屋台が立ち並んでおり外は賑やかだった。
「すいませーんお兄さん、ビール二つ下さい」
「いらっしゃい! はい! ビール二つね!」

 シオリが缶ビールを二つ買う。

「はいコテツくんお疲れ様」と缶ビールをコテツに渡すシオリ。
 シオリに手を引かれるままぼーっとついていったコテツはビールの冷たさで我に帰った。

「乾杯!」

 シオリと2人で缶ビールを開ける。コテツは滅多にアルコールを摂らないので久しぶりのビールだった。そして実はシオリも同じだった。普段はさっぱり呑まないシオリ。でも今日は祝杯を上げたい気分だったのだ。

「ねえコテツくん」
「ん? 何」
「このあいだ勝負した時に勝ったら話したかった話ってなんだったの」
「ああ、あれ。今日も勝ったら聞くつもりでいたけど負けたしな」
「いいよそんなの、自分のルール頑なに守るのってコテツくんの強さの源であり良さの一つだと思うけど私が聞きたいって言っている場合はべーつ! 女王の命令が聞けないのか!」とシオリが冗談を言ってくる。
「それもそうか、じゃあ言っちゃうよ」
「うん」
 シオリは心臓がドックンドックン言っているのを感じていた。
「あのさ…」

「待って! いや、いい。聞かせて…」

「あの、オレたちもうけっこう親しいでしょ?」

「うん」

「そろそろさ、連絡先を交換して欲しいんだけど」

「そんなことかーーーーー!」
 思わずガクッとくるシオリ。

「もっとさ、もう少し踏み込んでくると思ってたんだけど。まあいいか。じゃあケータイ貸して。私が登録しておくわ」

 とコテツのケータイを借りてシオリは自分の番号を打ち込みメールアドレスも打つと❤︎白山詩織❤︎と名前を登録した。

「教えたんだから必ず連絡してきてよね!」
「もちろんだよ」
「今日中にだからね!」
「わかった」
 


 
 ヒュルルル…………ドーーーーーーン!!

 ほぼ真上に花火が上がり始め2人は静かにそれを見ていた。こんな近くで見る花火は2人とも初めてだった。降り注ぐような花火を上を向きながら2人で眺めた。

「すごい! こんな近くだったんだ。きれいだね」
「そうねえ」シオリは少し酔ってきた。

「ねえ」
「うん?」
「私が勝ったんだから私の言うことを聞く約束よね」
「そんな約束あったっけ」
「いいから、とにかく私のお願いはひとつよ。ひとつだけならいいでしょ」
「まあ、いいよ」

「じゃあ結婚しましょう」
 
「……………ん!?」

「まさか嫌なわけ?」
「いや、それは嬉しいに決まってるんだけどだいぶ段階飛ばしたから驚いたよ」
「じゃあOKってことね」と言うとシオリはホッとしたあとマシンガンのように話し始めた。

「私はもうそれほど若くないわ。今年で28。子供は2人は欲しいし」
「一卓分ね」
「そういうわけじゃありません! とにかく、ゆっくり恋愛してる時間はもうないの。どうせあなただけって決めてたし、これ以上選んだり悩んだり駆け引きしたりするのも時間の無駄だわ。だいたいね! 綺麗な花火の下というシチュエーションは告白にもってこいでしょ! なのに、あなたと来たら連絡先の交換だけで終わりにする気なのだから呆れるわよ。
 人の心を読み取る麻雀を打つくせに私の心は読めないわけ? なんで私にはそんなに慎重なのかしら。
 仕方ないから私から告白したのよ! 感謝してよね全く!」

 シオリは顔を真っ赤にしてハアハア言いながら想いを全て伝えた。

「シオリ、ありがとう。感謝してもしきれません。じゃあ、手始めに帰ったら新しい部屋探そうか。子供2人居ても大丈夫くらいの広い部屋」

「そうね、結婚はいつしてくれるのかしら」
「明日にでも入籍したいよ。すぐにでも、シオリの気が変わらないうちがいい」

「私の気持ちは変わらないわ。だけど、じゃあ今週中には入籍しましょう。式はいらないわ。その分のお金で新婚旅行に行きたいの」
「シオリのしたいようにしていいよ。シオリの計画通りの人生にしよう。描いた理想通りのさ」

 

 婚姻届の証人はマサルにお願いした。

「麻雀の根拠のない格言も意外と当たるもんだな」とマサルが言う。
「何がよ?」
南白ナンパクつきものってことさ」
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