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第二部
第二十一報◉イベント最終日
しおりを挟む今日は日曜日。長谷川夫妻が麻雀教室に来る日だ。
小林は長谷川雅史にあらかじめ頼まれていたことがある。
──
────
「小林先生。手間かけて申し訳ないんですけど、あみだくじのおれの選んだ場所は『長谷川』って名前変えといてほしいんだ。偽名はなんでもいいから。週末の麻雀教室に春子が来るだろ。非売品のシャーク君をプレゼントするためにポイントためてるのは春子に内緒にしたいんだ。結局当たらなかったらガッカリさせるし…… な、お願いだよ」
「なるほど、わかりました。なにか適当に変えておきます」
とは言ってみたものの偽名って難しいな、と小林は考えていた。長谷川さんであることを忘れない偽名。
(うーむ)
────
──
雅史は(小林先生ちゃんと言っておいたことやってくれたかな)と気にしながら渋谷にやってきた。
「こんにちは」
長谷川夫妻来店。入店するやいなやあみだくじの名前欄を確認する雅史。すると──
セガさん
いや、ゲーム会社か! と内心ツッコんだ。そんなあやしい偽名はないだろと。
「ねー、アナタ。あれみて。セガさんだって。ゲーム会社の人なのかな?」
「あっ、ああ。そうだな」
(ほらー! さっそく気にしてんじゃん! ハ(セガ)ワからきてるんだろうけど、そんなら瀬川で良かっただろう)
だけどまあ、気にはしたもののセガさんが雅史であるとは思わなかったようである。春子がピンとこなければ作戦成功だ。
────
──
そんなこんなで隠し通してイベント期間が経過していった。そして、ついに今日はイベント最終日。
あみだくじはもう全部埋まっていてあとは今日のくじを開くメインイベントを残すのみとなった。
雅史は後半から調子を良くして最終的に6ヶ所に『セガ』の名前を書いた。シャーク君ストラップはたくさんあると聞いたがシャー子ストラップはレアらしい。当たるといいのだが。
1つ目
…2ゲームサービス券
2つ目
…2ゲームサービス券
(またか)
3つ目
…ドリンク券
4つ目
(そろそろ当たってくれ!)
…シャー子ケータイストラップ
「来た! シャー子! やった!!」思わず声を上げて喜ぶ雅史。もう当たらないのかと思い始めていた所にまさかのレア! しかし、このリアル寄りなサメをピンク色にしただけのケータイストラップをここまで喜ぶのはこの世で長谷川夫妻だけだろう。
『セガ』さんのあみだくじは残り2本。
5つ目
…シャー子ケータイストラップ
(アレッ!! レアだっていうこっちが2つ出てきた!)
「シャーク君とシャー子で揃えたかったけど、最悪これでもいい。か」と思って良しとするつもりになっていたが、しかし!
6つ目
…シャーク君ケータイストラップ
「出た! 出たあ! あぁ良かったー!」
「長谷川さんおめでとうございます! イベント期間中、毎日足繁く通った甲斐がありましたね」
「うん! ほんと良かった!」
ケータイストラップでこんな大騒ぎした大人がかつていただろうか。というほどの騒ぎだった。
こうして、あみだくじイベントは大成功の雰囲気で(実際には長谷川さん以外そんなに気にしてなかったが1人が毎日来たというのは雀荘にとってとても大きい)その最終日を終えた。
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