コバヤシ君の日報

彼方

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第一部

第十九報◉プロ試験

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「うーん。3面待ちを作るとどうしても高め安めができるな…… 上村! これ、わかるか? わかるならヒントくれ」
「7日の小林の日報ですか? 私はわかりましたよ。かなり考えましたけど。あれ、ちょっとイジワルなんですよ」
「イジワル?」
「いや、なにも嘘とかついてるわけじゃないけど。なんて言ったらいいのかなぁ。先入観が邪魔してくるというか。いや、そういうことかよ! って思ったといいますか」
「ふうん…… まだ答え言わなくていいぞ。もう少し考えてみる」
「わかりました。でも、そろそろ小林が日報をあげる時間になります。読まないわけにもいきませんし、タイムリミットは近いですよ」
「わかってる」

♪~

「あ、言ってるそばから来ましたよ」
「ぐあー! 残念。わかんなかった!」

◆◇◆◇

 最近出た辞令で杜若蘭チーフが主任に昇級していた。それにより蘭も社員日報を見れるようになった。チーフまではバイトリーダーのような扱いで時給制だが主任からは社員扱いの月給制なのである。

「ねーケンちゃん。昨日の日報の問題。答えはなんなのぉ」
「それなら新しい日報に答え書いたから読んでみてよ」
「あ、もう上げてるの? 読む読むー」
 蘭はケータイを開いて日報を確認する。
「………………こーゆーコトね。なるほどね。はいはい。なんていうか…… ひっかけじゃんこれ!」
「んまぁ、ひっかけといえばひっかけかもね」
  

 答え

3.7の2枚を追加する。

三三12334567789

2.5.8待ちピンフのみ

「まさか一気通貫イッツーになってないとはねぇ~」
「ちょっと面白いよね」
「ケンちゃんはこの問題わかったの?」
「まあ、クイズは得意なので」
「アタマやわらか~い」
「プロ試験、この手の問題ばっかりなら逆に安心なんだけどな。まあ、そうもいかないから一般常識とか漢字問題とかにも備えておかないとね」
「ケンちゃんは真面目ねぇ。そんな頑張らなくても絶対合格すると思うけど」
「油断して落ちたら笑えないので。頑張ります」

────
──────

 ──そして試験日。

(よし、過去問は全て解いた。わからない問題はひとつもない。常識問題も大丈夫。漢字も覚えた! 死角なし!!) 

「行くぞ!」

 満を持して試験会場へ。2列に並んで受付を待つ。
 すると受付にはよく知った顔がいた。

「はい、名前を書いたら突き当り左の階段を上がって正面の部屋に入って下さい。席は黒板に番号が書いてあるのでその通りに座って時間までお待ちください」

「……蘭ちゃん。前髪切った? てか、なんでここに」
「あ、姉とお知り合いですか。はじめまして。私は杜若茜かきつばたあかね。よく間違えられるんだ。姉とは4つ離れてるんだけどなぁ」
「えっ! 似すぎ! えっ! えっ! ウソ!? あ、でもホクロの位置違うわ。あ、別人だ。へぇ~。そっくり。超美人姉妹じゃん!」
「えへへっ! あなたは良い子。もう合格でいいわ」
「ありがとうございます(性格も似てるな)」
 するともう一人の受付の女性が「いいわけないでしょ!」とツッコミを入れる。それはそう。

(へぇ~、杜若茜さんかー。めちゃくちゃキレイだったな。てか、同じに見えるけど)

 試験開始まで時間があるので検索で杜若茜と調べてみた。
 すると、茜はかなりの打ち手なようだ。女流Aリーグに最速で昇級して、常に上位に位置している。師団の会長にも目をかけられているようで会長のコラムで紹介されていた。

(ふーん、今は茨城に住んでて県内の雀荘をかけ持ちして麻雀教室などを定期的に開くことで競技麻雀を広めてるのか。がんばるなぁ。拠点は水戸周辺か。遠っ!)

 すると先ほど受付にいた茜さんじゃない方の女性が大きなカゴをもってやってきた。
「はい、まもなく試験を開始しますので携帯電話をこちらのカゴに預けてください。筆記試験終了までの45分間だけ預かります。預け終わりましたら筆記用具を準備して待機」
 なんだか厳しそうな人だ。ザ・試験官といった感じがする。逆らわない方が良さそうだ。まあ、もともと逆らうつもりはないが。

「問題用紙、回答用紙を配ります。全員に配り終わり次第試験を開始します」

 小林の手元に問題用紙と回答用紙が届いた。ついに本番。テストを受けるなんて学生時代以来だ。久しぶりの試験に緊張する。

「制限時間は45分です。それでは、始めてください!」

ピ!


 小林賢のプロ試験が始まった──

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