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たまには休憩
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〈ダルフルの寝床〉という酒場の喧騒が消え果てて早三月を超えた日、通りすがりの休憩をここでとることになった。
かつて町ごと魔物の氾濫にあい、大手クランのホームだったが見事に廃墟の憂き目をみている。堅牢なクランホームな故か魔物に荒らされず埃っぽいだけで、かつての住人たちが手を掛ければたちまちそんなことあった?と首を傾げるばかりだろう。
クランホームの外では魔物の徘徊が町中で忙しなく、壁に掛かったリュートが震動で聴くともない音色をぼんやり響かせたりする。この酒場の良さは躾のいい連中の(ワタシに酒を振舞う気前の良さ)宴会と歌声だったのだが。
今回は近場で回収した魂の生前の願いを通りすがりに叶えることにしようか。
隠し蔵の逸品をこっそり一杯、その間だけ、迎えに来た魂がちょっとばかり目を離した酒場で嗚咽を漏らそうがうろつき廻ろうが、鎮魂の手続というやつであろう。目くじらを立てる様な上司は忘れるのが死に神の規範であるときまっている。
「一曲」欲しいね。
口当たりの良い、のどを焼く蒸留酒にツマミがないことが残念だ。
………… 何故か湿っぽい辺りからは、大きな深呼吸のくり返しに、かわった。
やがて唐突に手を打つリズムが響き、明るい曲調とぐずる鼻声のコーラスがはじまる。
♫~♪~♪♬
♬♫~♪~
ユックリと味わった一杯を飲み尽くしても、曲はやがて終わり、振り向けば視線を交わした。
やれやれ、酒気が抜けるのにもう少しかかるのだが、充分だろう。
「一人。それだけ」
遠耳を立てていた魂は少しして、くしゃりと笑みを浮かべ、首を縦に動かす。もうそこに、人の怒号が近い。
さぁ、ついて来い。
伸ばされた手を捕まえて酒盃の横に導くホコリを被った卓に指がぶつかり、魂が不意打ちに硬直する。
「すまんが酒代はお前のツケで頼む。ホコリの上にサイン入りで伝言をな」
一瞬ワタシを見つめると、捕まえられた手の指を伸ばして試すようにそっと触れて伝言を記していく。酒盃の横の確かな筆跡。誰か気づいてくれるのか、判りはしないな。
通り過ぎる人声に足音を耳にしつつ………
かつて町ごと魔物の氾濫にあい、大手クランのホームだったが見事に廃墟の憂き目をみている。堅牢なクランホームな故か魔物に荒らされず埃っぽいだけで、かつての住人たちが手を掛ければたちまちそんなことあった?と首を傾げるばかりだろう。
クランホームの外では魔物の徘徊が町中で忙しなく、壁に掛かったリュートが震動で聴くともない音色をぼんやり響かせたりする。この酒場の良さは躾のいい連中の(ワタシに酒を振舞う気前の良さ)宴会と歌声だったのだが。
今回は近場で回収した魂の生前の願いを通りすがりに叶えることにしようか。
隠し蔵の逸品をこっそり一杯、その間だけ、迎えに来た魂がちょっとばかり目を離した酒場で嗚咽を漏らそうがうろつき廻ろうが、鎮魂の手続というやつであろう。目くじらを立てる様な上司は忘れるのが死に神の規範であるときまっている。
「一曲」欲しいね。
口当たりの良い、のどを焼く蒸留酒にツマミがないことが残念だ。
………… 何故か湿っぽい辺りからは、大きな深呼吸のくり返しに、かわった。
やがて唐突に手を打つリズムが響き、明るい曲調とぐずる鼻声のコーラスがはじまる。
♫~♪~♪♬
♬♫~♪~
ユックリと味わった一杯を飲み尽くしても、曲はやがて終わり、振り向けば視線を交わした。
やれやれ、酒気が抜けるのにもう少しかかるのだが、充分だろう。
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