悪戻のロゼアラ

yumina

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告白

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「お久しぶりでございますヴァレリア様。ようこそお越しくださいました」
 俺は黙礼した。
 重厚な扉を押さえて迎え入れてくれるこの執事さんを覚えている。執事さんも俺の事を覚えてくれている。
 ベルン大公家。
 魔法にかかる前はよくこの屋敷へ遊びに来ていたのだから当然だ。でも俺は別の機会でも顔を合わせている。
 ここは前回の俺にとっての婚家である。そこで俺は彼の主人にもなったのだから。

       ※ ※ ※ ※

 ここにはいい思い出なんてひとつもない。理想と現実の乖離に心を病み、そして国を破滅に導く序章となった場所。
 
 いつもは俺のことには無関心だったラゼルがその日俺を激しく問い詰めてきた。俺が初めて朝帰りをしたその日の夕方のこと。
 結婚してから十六年目。
 これまでは俺が何をしようが気にかけることは無かった。
 ロゼアラ出産後、窮屈な婚家から逃れたくて、ラゼルに当てつけるように居場所を求めて様々な家の夜会に参加していた。大公家ということで招待状に事欠くことはなかった。その中から実家派閥の家門のものだけ選りすぐって参加していたのだ。
 俺だって考え無しじゃない。自分の属性が世間でどんな評価か知ってるから隙なんか見せない。実家のヴァレリア家と繋がりのある家が主催なら俺の名誉を損なうような真似はしない。そんな計算込みで夜会に入り浸っていた。たまに御前様になることはあったけど、夜を明かすことは絶対にしなかった。
 けれどその日は事情が違った。
 別に後ろ暗いものじゃない。参加していた夜会から急遽実家へと足を運んだだけだ。
 だからありのままを説明した。けれどラゼルは納得してくれなくて雲行きがだんだんと怪しくなってきた。
 どうせ報告しても聞き流されるだけとたかをくくりラゼルに許可を取る努力をしなかったのが不味かった。
 俺の帰りを馬車で待つアスターに事情を説明して一人で帰らせ、実家の馬車で俺は数年ぶりにヴァレリア家へ向かったのだ。
 それが夜半の事。
 そこで懐かしさからついつい話し込んでしまい、気がつけば空が白み始めていた。
 家へ帰るとラゼルは不在だった。
 仕事で城に詰めていると俺を迎えたアスターが報告してきた。
 それを聞いて俺は安心して寝室で睡眠をとった。
 どんな理由でも朝帰りは俺も少しは気まずいなとは思っていたからラゼルに朝帰りがバレずに済んで良かったと思っていたのだ。
 ところが物事はそううまくはいかない。
 仕事で城に詰めていたラゼルが帰宅した夕刻。ラゼルの耳には俺が夜会を抜け出し誰かと逢瀬を楽しんだという話が届いたみたいだった。あの夜会の参加者の誰かが面白おかしく広めたのだろう。俺は存在の派手さからよくこんな醜聞をでっち上げられる。
 初めは冷静に受け答えをしていたけどラゼルの頑なさに酷い罵り合いに発展してしまった。それが悲劇の始まりとは気もつかず。

「お前も少しは大公家当主の自覚を持て」
「何それ。どうしてそんな事をお前にいわれなくちゃならないんだ。自覚を持てだって? その言葉そのままお前に返してやるよ」
 今まで俺をほったらかしてきたくせに。
 呼び出された広い居間に俺とラゼルの言い合う声が響く。
「ロゼアラ以外のことでこれまでお前の行動に口を挟んだことはない。だがそれはお前を信用していたからではない」
 部屋に入るなり扉を閉める間も無く俺はラゼルから問い詰められたのだ。
 弁明も申し開きも効果が無かった。聞く耳を持たないラゼルとそうやって拗れていきお互いの鬱憤を晴らすような言葉の応酬となった。
「お互い様だろ。俺だってお前のことなんか信じてない。俺たちは政略上の関係だからな」
 意地を張り続けて十数年。この頃になると俺も憎まれ口の一つや二つたたくようになった。
「それで火遊びか。俺はお前に対して責任を取ってきたつもりだ。だが今回のことは許し難い」
 ラゼルの声はいつにも増して抑揚がなく温度が無い。
「は? 責任? 俺に対して? 笑わせるな! お前がいつそんな態度をしてくれた? いつも俺のことなんか知らん顔でいたじゃないか!」
「喚くな。子供じゃ無いんだ。冷静に話をしろ」
 その言い草がこの上もなく頭にきた。
 これまではロゼアラのことで小言を言うことはあった。俺が取り合わずに黙っていても言いたい事を言えば満足するのかすぐに俺の前から消えた。それがここにきて俺の素行を糾弾する。なんの了見だろうか。
「悪かったな、子供で!」
「トワ、いい加減俺も腹に据えかねている。正直に答えろ。昨夜は誰とどこへ行っていた?」
 俺は何度目かの同じ説明を口にする。
「だから実家に帰っていただけだ! 疑うなら父上にでも母上にでも家の使用人にでも聞けばいい」
「あそこの人間はお前の味方だろう。口裏を合わせるのは簡単だろうな」
「お前はっ! 俺がずっとお前のことをどんなふうに思っているか知っているだろう! これまでだってさんざん伝えてきた! どうして信じない⁈」
 頑として取り合わないラゼルに焦れて叫んだ。
「信じたいさ。だが信じるに足る根拠が無い」
「俺は一度だってお前を裏切るような真似はしていない!」
 俺は必死になって声を張り上げた。
「そうだろうな。お前は俺を裏切らない。だからこそお前を信じることができないんだ」
 ラゼルは目を伏せる。
「意味がわからない」
「裏切られて初めてお前のことを信じることができるとは皮肉なものだ…」
 成立しない会話に俺も苛立ちが募る。
「だから俺は裏切ってなんかない」
「朝帰りをしておいて言うセリフか。開き直るのも大概にしろ」
 それでもなおラゼルは聞く耳を持とうとしなかった。
「大概にするのはそっちだ」
 もはや売り言葉に買い言葉だったのだけど。
「服を脱げ」
「…なんだって?」
 予想外の言葉に聞き返してしまった。
「お前が無実だと言い張るなら証拠を見せろ。そこに這って奥を確認させろ」
 そこまでなのか。
 俺は絶句した。
 ロゼアラを産んでからは積極的に俺に触れようとしなかったラゼル。特性上どうしても定期的に訪れる発情期。俺は惨めな気持ちで自分で自分を慰めていた。それなのに今度は潔白の証拠を見せろだって? それもひどく尊厳を傷つけるようなやり方で。
 どうあっても俺の想いはラゼルに届かない。
 俺はこの時初めてラゼルに絶望した。何かが儚い音を立ててぷつりと切れた。全てが砂上の楼閣のように俺の中で崩れていく。
「ははは。馬鹿馬鹿しいな」
 俺がラゼルに捧げた二十年間全てが徒労に終わった。
 そんな諦めの境地だった。
 そう思えば乾いた笑いしか出てこない。後はもうやけになるだけ。
「……お前と結婚したのが間違いだった…。ロゼアラなんて産むんじゃなかった!」
 喉から絞るように溢れた言葉。
「だから俺はあの時言ったはずだ。子供は要らない。後悔すると」
 ラゼルは呆れたように首を左右に振った。そんな仕草すら癇に障った。
「煩い! お、俺が今までどんな思いをしてきたか知らないくせに!」
 器から水が溢れるように口からは取り返しのつかない言葉がとめどなくこぼれでた。言ってはいけない言葉の羅列。けれどそれを堰き止めることは激情に呑み込まれた今の俺にはできなかった。
「お二人とも!」
「!」
「…ロゼアラ……」
 アスターが俺たちに割り込んできた時はすでに遅く。
 振り向けば戸口で佇む俺によく似た息子の姿。俺たちは部屋の扉を開けたまま入り口付近で言い争っていたから周辺にそれなりに声は響いていただろう。後は晩餐を待つだけの余暇をアスターと過ごすロゼアラが俺たちの諍いに異変を感じ取ってここへきても不思議ではない。
「父上…トワ…」
 聞かれた。涙で潤んだロゼアラの目。
 迂闊だったとしか言いようがない。俺は目を逸らす。
「俺、この屋敷を出る。もう沢山だ…!」
「トワ、早まるな」
 瞬時に引きとめられたが俺は捨て台詞を吐いた。
「お前は好都合だろ! 厄介者の俺と別れられるんだ! 良かったな!」
「ロゼアラはどうするつもりだ。連れて行くのか? あの子はこの家の跡取りだ」
 俺のためではなくロゼアラのため。
 ああ、そうだ。ラゼルの小言はいつもロゼアラのことに関して。俺のことなんて微塵も興味がないのだ。さっきの言い合いだって大公家の名誉のために俺の振る舞いを嗜めたかったのだ。
 この十数年でさんざん思い知らされていたけど。
「…好きにしろ! 俺はもう何にも縛られたくない」
 去り際に俺を追いかけようとするアスターへ、頭が冷えるまで放っておけと言い放つラゼルの声が耳に届いた。



「トワ」
「何だ? 俺に何か用か?」
 床の上に旅行鞄を広げてその中に当座の着替えを詰めている途中、後ろからロゼアラのか細い声が俺の名前を呼んだ。
「父上と別れるって本当? 家を出るの?」
「………」
 俺は振り返りもせず黙々と荷物をまとめていく。服はこれで足りるだろう。そばに無造作に置かれた小物入れを手にする。中身は私物の装飾品だ。ここへ来てから義務的に買い与えられた貴金属や宝石はそのままこの家に置いていくから持ち出すのは数点、嵩張るほどの量じゃ無い。それを鞄の隙間に突っ込んだ。しばらくは実家に身を寄せよう。それから今後の身の振り方を考えて──
「トワ」
 ロゼアラの呼びかけ。
 俺は手を止めたけどやはり振り返ることはせずに口だけ動かした。
「そうだよ。やっと自由になれる。清々するよ」
「トワ」
「煩い。俺は忙しいんだ。ラゼルのところに行け」
 腹の中のドロドロしたものを抑えるのがその時の俺の精一杯。ささくれだった今の気持ちでロゼアラを見てしまったら俺はきっと取り返しのつかない言葉を更に口にしてしまう。その時の俺はそれくらい余裕がなかった。
「トワ」
「しつこ……⁈」
 ギラリと研ぎ澄まされた白刃が俺の目の端を掠めた。

「何をしてるんだ、ロゼアラ」
 振り返って見上げれば細身の剣を片手に笑うロゼアラ。
「やっとこっちを見てくれたね」
 ロゼアラは幸せそうに微笑んだ。その手に持つ鋭利な武器が不釣り合いなほど。
「そんな物騒なもの、早くしまいなさい。怪我でもしたらどうする」
 剣を向けられる。
 俺の人生の中で初めての経験。対処の仕方もわからず固唾を飲む。
「トワ、怖い?」
「ロゼアラ、冗談はやめろ…」
「嬉しい。僕のことちゃんと見てくれてる」
「ア、アスター!」
 俺は這ってロゼアラから逃れようとした。
「嫌だな。まだ僕以外の人を見るの?」
「ロゼアラ、剣を離しなさい!」
 無様に床を這ってロゼアラの持つ斬撃の範囲から遠ざかり、アスターへと助けを求める。けれど返事はない。アスターは近くにいない。
 それが俺を更に追い詰めた。
「ダメ。ちゃんと僕を見て?」
 ロゼアラが一歩一歩ゆっくりと近づく。
「ひっ!」
 俺は腰を抜かして声にならない悲鳴をあげる。
「だ、誰かっ、助け…っ!」
 ロゼアラを間近にした時、俺はたまらず助けを呼んだ。
 その瞬間、ロゼアラの顔が不機嫌に歪んだ。この子の瞳はこんなに澱んでいただろうか?
「まだわからないんだ? だったら仕方ないね」
 ロゼアラが剣を両手で掲げるように振りかざし、そして…。

 嘘だろう…?
「あはは。これでトワは僕だけのものだね」
「………」
 噴き出る血の海の中。朦朧とする意識。見下ろすロゼアラは夢見るような蕩然とした目で微笑んでいた。涙を流しながら。
「やっとこっちを見てくれたね、僕の親愛なるトワ…」
 囁きは甘かった。
「どうして…ロゼアラ…」
 目の前が暗くなった。
 身体が傾く感覚はわかった。
 そばに置いていた旅行鞄にぶつかり仰向けに倒れ込んだ気がする。
 意識がなくなった。



「誰がト…をこ……目に…っ!」
 遠くに聞こえる誰かの激昂の声。
 ラゼルによく似ているけれど、意識が混濁としてよくわからない。
 俺がこんな目にあって心配してくれているよう。俺にもこんなふうに言ってもらえる誰かがいたんだな。
「………!」
 声は聞こえるけれど、もう意味を理解することもできない。
 斬られた傷は響くように身体全体を疼かせている。手足の先は冷たくて微塵も動かせない。
「トワっ! ……ない……れ! ……いだ! ………りにしな…でくれ‼︎」
 祈るような叫び。
 やっぱり誰の声かわからない。
 …ラゼルだったらいいな。
 ラゼルが俺の事を心配してくれるなんて夢みたいだから。
 俺はやっぱり馬鹿なのだろう。こんな瀬戸際でも飽きもせずラゼルを求めている。
 ラゼルにちゃんと謝らなきゃ。
 きちんと誤解を解いて、酷い言葉を口にしてごめんなさいって。それで今までありがとうって綺麗にさよなら言わなくちゃ。
 なんでかラゼルとはもうお別れなのだと漠然と感じている。
 だから最後くらい素直になっておきたかった。
 ラゼルを好きになって良かった。
 俺の我儘に付き合ってくれてラゼルの血を引くあの子を俺に授けてくれた。
 感謝だ。
 同じ気持ちを返してもらえなかったけど、一番近くに居させてもらえた。
 辛いことばかりだったけど、ラゼルの側にいられて幸せだった。
 お別れした後はラゼルは本当に好きな人と幸せになってほしいな。悲しいけど。
 俺はラゼルの運命じゃなかった。
 けど、ラゼルは俺の運命だったよ。
 側にいるだけで幸せだと思える相手なんて他にいなかったよ。
 ここにきて憑き物が落ちたように俺の心は凪いでいた。
 俺の中の凝り固まった何かが静かに溶けていく。
 あの子にも謝らなきゃ。
 最低の言葉で傷つけてごめん。
 悪い親でごめん。
 あの子を抱きしめて謝りたいよ。
 俺とラゼルの子。
 瞳がとても印象的な俺の息子。
 名前はなんだったかな。
 ぼんやりとする頭ではなかなか思い出せない。
 確か、あの子がお腹にいた頃にすごく悩んで考えついた名前。
 俺の好きな人の名前と同じ響きにしたくて。名前を呼ぶたびに幸せになれると思いついた名前。
 それは。
 思い出した。
 ロゼアラ、だ──
 
 甦った名前と共に俺は覚醒した。目を開くと白い光が差すだけで何も見えなかったけど。
「トワ様!」
 耳元で名前を呼ぶのは俺の大切な従者。辛い時にもずっと側にいてくれた。
「ア、スタ…?」
 力が入らず弱々しい掠れた声しか出ない。俺の声はこんなにしわがれていたかな?
「トワ様! 私はここです!」
「ロゼアラは、どこ…?」
「ロゼアラ様は…」
 言い淀むアスターにここにはいないのだと俺は察した。
「ロ、ゼアラ…をた…のむ…よ。あの子の側に居て守ってあげて……」
 声を出すたびに酷い痛みが走る。
 でもそんなのはどうでもいい。ちゃんと伝えなければ。あの子の事を助けてあげてと。
 目尻に流れる冷たい涙は滂沱の滝。
 俺に泣く資格なんてないのだけれど。
「トワ様!」
 それが俺の最後の言葉だった。
 ラゼルへの感謝を言葉にする前に俺は昏睡状態に陥り、それから二日間痛みに苦しみ抜き苦悶の末、事切れた。

 これが前回経験した俺の死に際。

 その後のことは記憶というより記録のような情報として頭の中に刻まれている。

 俺の死後、国王フリュウの元へ突如として現れた﨟たけたオメガの少年。
 神の御使いと名乗る少年は艶冶な肢体で国王を惑わせ、陥落は早く。気がつけば少年は王の番いとなっていた。
 ここから始まる粛清は見るに耐えない惨劇の狼煙。
 傾国のオメガ、悪戻のロゼアラの真髄は一人一人地獄の果ての楽園へと誘った。

       ※ ※ ※ ※

「只今戻りました」
 通されたのはベルン家の中庭。花が盛況で色とりどり目に賑やかだ。
 先を行くラゼルは中央花壇前で庭師と思わしき使用人と話をしている日傘を持った女性に声をかけた。
 絹のような長い黒髪を一つに緩く束ねた淡い色味のドレスを着た女性、ラゼルの母君のチトセさん。
「お帰りなさい、ラゼル。貴方がここへ来るなんて珍しいわね…」
「お久しぶりです、チトセさん。ご無沙汰しておりました」
 俺を見て夫人は目を見開いた。俺の訪問は伝えられてないようだ。
「トワさん⁉︎ お元気にしてらしたかしら⁈」
「この通り、お陰様で。チトセさんの方こそお変わりなくお元気そうで何よりです」
 俺の杞憂だったみたいだ。普段よりも活力がある。ラゼルから聞く近況に不安があったけど、病気はしてなさそう。
「えぇ、私は元気です。嬉しいわ、最後にトワさんの顔を見ることができて」
「領地へ向かうと聞いてご挨拶に伺いました。最後なんてそんな寂しいことを仰らないでください」
「ラゼルから聞いたのね。そうね、少し感傷的になっていたわ。でも本当にトワさんに会えて嬉しいの。トワさんは相変わらずの美人さんね。大人っぽくもなってびっくりしたわ」
 夫人は俺を見ながら眩しそうに目を細める。
「母上、お茶を用意させます。そこへ移りましょう」

 応接室に通された俺はラゼルと夫人の三人でテーブルを囲んでいた。
「こちらはヴァレリア様からの差し入れでございます。茶請けに使わせて頂きました」
 先程の執事さんが俺たちそれぞれに硝子の小皿に載せたふるふると震える愛らしい茶菓子を給仕してくれる。
「まぁ綺麗!」
 人気店の旬の果物のゼリー寄せ。涼しげな見た目に惹かれて手土産に選んだ。夫人は嬉しそうに喜んでくれて俺も満足だ。
「お口に合えば良いのですが」
「ありがとうトワさん。私のために嬉しいわ」
 
 口当たりの良いゼリーにしばし舌鼓を打っていた夫人がおもむろに俺とラゼルに視線を向けた。
「最近はラゼルとの噂を聞かないわ。もしかしてラゼルは振られちゃったの?」
「母上…」
 ラゼルが情けない声を漏らした。さすがのラゼルも母君の前では形無しみたいでかわいい。
「ラゼルとは友達です。噂が大袈裟だったんですよ」
「そうなの? 残念だわ。トワさんがお嫁に来てくれたらいいと思ってたのよ。ラゼルは人としてちょっと足りないところがあるでしょう? トワさんならそこを補ってうまくやっていけるんじゃないかと勝手に妄想してたの。ふふ、ごめんなさいね」
 俺がきっぱり否定すると、夫人は本当に残念そうに微笑んだ。
 息子に対して辛辣なのも、俺に対して甘いのも前回のままで、俺は夫人と会えて少し心が安らいだのだった。

「挨拶も済んだし、俺帰るね…」
 夫人に来客があり、お茶の時間はお開きになった。
 この屋敷に長居したくない俺は夫人が席を立つと間髪入れずにラゼルにそう伝える。ここは俺の精神衛生上よろしくないのだ。
「待って。少しお前と話がしたい。俺の部屋へ来てくれ」
 いそいそと帰り支度を始める俺をラゼルは引き止めた。
 ラゼルの自室なんて二人きりになってしまう。是非とも遠慮したい。
「ここじゃ駄目?」
「そう警戒しないでくれ。無体はしないと誓う」
 信用していいのかな。
 今回のラゼルは俺に対してちゃんと話をしてくれる。無体だなんて物騒な表現だけど。

「あ、これ…」
 何年かぶりのラゼルの部屋。奥にある寝室の扉の横の腰丈のチェストの上に置かれていたものに思わず声を上げた。
 帆船の模型だ。
 その後ろの壁には設計図が額に入れられて飾られている。本物の船の設計図から縮尺されたそれは細部にもこだわった本格的なものだった。
 懐かしい。
 学院に入る前、これを元に俺とラゼル二人で模型の制作に取り掛かった。その途中、俺がおかしくなってしまったから手付かずのまま放置されてると思ってたけど、ちゃんと完成されている。
 ラゼルが仕上げてくれたのかな。それをちゃんと部屋に飾ってくれている。俺との思い出を大切にしてくれているようで嬉しくなる。
 一度目の時は結婚後この屋敷のどこにもこの船は飾られてなかった。
「中途半端にしておくのも落ち着かなかったから、一人で完成させたんだ。勝手に進めて悪かった」
「ううん。ちゃんと完成させてくれてて嬉しいよ。懐かしいなぁ」
 大きくなったら船に乗って二人で冒険の旅に出ようと約束したんだ。
 当時読んでいた冒険物の物語の本がそんな内容で、波乱万丈な展開が楽しくて読んでるだけでワクワクドキドキしていたな。俺は感動を共有したくてその本をラゼルに薦めたのだ。
 ラゼルも気に入ってくれて、その影響で俺たち二人はお小遣いを出し合って組み立て式の模型を買った。設計図は難解で子供の俺はしばらくそれと格闘した。ラゼルは流石というかすんなり構造を理解して俺にわかりやすいよう説明をしてくれたのは懐かしい思い出だ。
 船体が完成して、あとは帆の部分だけという時に俺たちはおかしくなった。俺が魔法にかかり、ラゼルは態度を硬化させ俺を避け始めた。
「お前との共有財産だから俺が独り占めしているのは良くないと思っていたんだ。けどこれをどうするかお前に相談する事が出来なくなったからここで飾らせてもらっていた」
「何処かへしまわれるより飾ってもらった方がこいつだって嬉しいよ。帆の部分、こんなに大きかったんだね。これだったら風を孕んでどこへでも行けそうだ」
 触れないように輪郭をなぞる俺をラゼルは静かに見守っている。
 少し日が傾きかけた薄暗い部屋。
 俺はラゼルが何かを言うより早く切り出した。
「俺はおかしかったよね。自分でも不思議なくらいなんだけど、まるで魔法にかかってたみたいに異常だった。どうしてかラゼルしか目に入らなくなって他の事に目が行かなくなったんだ。ラゼルだってそれがわかったから俺を遠ざけたんだよね。でも今は大丈夫。ちゃんと元に戻ったよ、俺。もうラゼルに迷惑はかけない。だから安心して俺のことは放っておいていいからね?」
 言うなら今だと思う。
 ラゼルの話がなんなのかわからないけど、予防線を張るためにも俺の話をしておいた方がいいような気がした。
「………」
「今までごめんなさい。多分、俺が思っている以上にラゼルに迷惑をかけたよね。謝ってすむことじゃ無いけど、もう二度とラゼルを煩わせたりしないから」
 ラゼルが陰で俺の為に奔走してくれたことも含めて。
「だから二人きりでこうやって会うのはこれきりにしよう。俺はラゼルとは普通の友達でいたいんだ」
 やっと言えた。
 いつかは踏ん切りをつけなきゃいけなかった事。だから勇気を出して伝える事にした。
「……他に好きな奴ができたからか」
 薄暗い室内でラゼルの表情はわからない。ぽつりと響いたその言葉に俺は首を横に振った。
「いないよ、好きな人なんて。俺は誰も好きにならない」
 金輪際、他人を好きになったりしない。俺はずっとラゼルしか好きにならない。
 あんなに酷い結末を経験してきたのにラゼルを嫌いだと思うことができないのだから自分の始末の悪さにほとほと嫌気がさす。
「お前は公爵家の嫡男と言ってもオメガだ。家督を継ぐことはできないだろう。そのうち誰かをあてがわれて、そいつとの間に産まれた子供が跡取りになるんだろう」
「…その子がオメガじゃなければね」
 オメガは裁量権を持つ立場には不向きだ。アルファ性に支配されがちで、過誤を起こしやすい。ラゼルもロゼアラの子を大公家の跡継ぎにと言っていた。世間一般的にそういう扱いなのだ、オメガというのは。
「お前はそれを受け入れるのか?」
「父上達は好きにしていいと言ってくれてるよ。跡取りなんて親戚から養子をとってそいつに継がせることもできる」
 前回はそうだった。
 俺とラゼルの、大公家を継ぐ嫡男以外の子供を公爵家の跡継ぎにする予定だった。結局俺はロゼアラ一人しか産まなかったから、その話は無くなった。その代替案として遠縁の八歳下のリノを引き取りヴァレリア家の跡を継ぐ準備をしてもらっていた。俺がその矢先死んでしまって、ヴァレリア家も潰されてしまったから、リノには悪い事をしたと思っている。でも今回はそんな事にはならないから、安心して家督を譲れる。
「俺はそうしようと思ってるんだ。俺の気質は誰かの持ち物に収まるには向かないみたいだから、一人で生きていこうと考えてるよ」
「フリュウとも?」
「もう! どうしていつもフリュウの名前を出すの!」
「それはあいつが今の所一番の強敵だからだ」
 多分、その場の流れ。
 ラゼルのいつもの悪い癖。
 揺らぐな、俺。
「またまた。ラゼルって俺の気分を良くさせる天才なんだよね。でもあんまりそんなことばっかり言ってると本気にしちゃうからな? 俺の厄介さ加減を知ってるだろ? 冗談はあんまり言っちゃ駄目だぞ」
 負けまいと茶化したけど、ラゼルは笑ってくれなかった。
「冗談? お前は俺がそんな事を冗談で言うと思っているのか?」
「だってラゼルは俺の事が嫌いでしょう?」
 ああ、辛いな…。
 自分で認めるにはこの言葉は棘が多くてうまく飲み込めない。だから今まではっきりと口には出来なかった。
 友達とは言ってくれた。けどそれ以上の関係を欲張ってラゼルを悩ませた。好かれる要素なんてどこにも無い。
「俺はお前のことを嫌いだと思ったことは一度だってないよ」
 その言葉に過剰に反応してはいけないと思ってても、言葉は自然に溢れでる。
「どうしてそんな期待を持たせるような事をいうの? ラゼルはいつだって俺の事を迷惑そうにしてた。俺自身、自分が普通じゃない行動をしていたって今はわかっている。こんな奴、好きになる人なんてどこにいるの⁈」
 苦いものを飲み下す時みたいに歯を食いしばる俺の首筋にラゼルは無言で手を伸ばしてきた。
「ラゼル…? どうしたの? ごめん、怒らせた?」
 頸動脈あたりをさすられて俺は慄く。ラゼルの表情は逆光でやっぱりわからない。けど空気が変わった事を肌で感じた。
「ラゼル…、何してる、の…?」
 ラゼルの意図に気が付いたのは首のベルトを外された後だった。留め金は複雑な造りになってるから、簡単に外せないはずなのに。抵抗もせず大人しくしていたのが仇となった。
 足元に外されたベルトがすとんと落ちた。
 湯浴みをする時以外は外さない首の保護具が無くなって、その開放感が逆に心許なくて俺は怯えた。
「ラゼルってば! なんで俺のベルト外すの?」
 オメガ性にとっては人生を左右する大切な装身具。ラゼルだってそれくらい知ってるだろうにどうしてこんな真似をしてくるんだ。
「お前が全く分かってないからだ。俺がお前のことをどう思っているか教えてやる」
 ラゼルの発する静かな圧力に身の危険を感じ咄嗟に逃げ出そうとするけど、動きを封じ込めるように背後の壁際に追い詰められて後ろから壁面にはりつけられる。
 嫌な予感に慌てて後ろを振り返ろうとする前にうなじに鋭い痛みが走った。

       ※ ※ ※ ※

 ラゼルの無体の基準って何なんだ!

「やめっ、ラゼ…ルっ! そこ、ダメ…」
 首を噛まれる。
 やってる最中じゃないから番い契約は成立しないけどアルファにこんなんされて平静でいられるオメガいるのっ?
「トワ、お前はいい匂いがするな」
 ラゼルが俺の頸を甘噛みしながら鼻を擦り付けてくる。
「やぁ!」
 体臭を嗅がれていると思えばさらに羞恥を覚えおかしな声が口をついて出るばかりだ。
「怯えないで。酷くはしない」
 ラゼルは後ろから片手を伸ばして俺の顎を大切なものを扱うように優しく撫でる。
「だって、だってぇ、首、噛まないで…。なんで、こんなこと、するの…?」
 壁とラゼルに挟まれ逃げる事ができない俺はすっかり混乱して舌足らずになっていた。
「言っただろう? 他の男の匂いをつけたら覚悟しておけと」
 そんな俺に構わず、ラゼルは空いている手を俺の腰に回して抱き寄せた。
「匂い、なんか、つけ、られてな、いよ…っ!」
「つけられたじゃないか。俺の前で」
 誰? そんな奴居た?
「そんなの知らないっ…よ」
 必死に否定するけどラゼルは目を怜悧に光らせた。
「アルトバイム。よくも俺の目の前で手を出してくれたものだ」
 アルトバイムってハヤナのこと?
 あの時ハヤナに抱きつかれた事言ってるの? でもハヤナは男と言っても。それにラゼルは俺に怒っていたんじゃなかったの?
「うわっ…」
 体がぐらつき声をあげる。ラゼルに抱き寄せられ密着する形になった。
「俺にこうされるのは嫌か?」
 顎と腰に回された手に拘束されて離れることができない。背中にラゼルの体温を感じて体の奥から何かが駆け上ってくる。
「い、嫌だって…言ってる…。俺は誰とも番いになんてならないんだから」
「フリュウとも?」
「あっ、あ…んっ! や、やめて、ラゼルっ!」
 なけなしの抵抗を嘲笑うかのように後ろから壁に押さえつけられる。脚の間にはラゼルの片足が割り込んで動きを封じられ、不安定な体勢で受けるラゼルの不埒な行為に俺の口からは耳を塞ぎたくなるような甘ったるい声しか出ない。
「誰とも番にはならない? ちゃんと答えろ」
「な、ならない…っ! 俺は、ひと、りで、生きていくん、だ…っ! ああっ!」
「こんなに敏感な身体をしてるのに? 一人で耐えられるのか?」
 追い打ちをかけるように首を噛まれて俺はもう息も絶え絶えだ。
「はぁっ、噛まないでっ、もぅ、やだぁ…!」
 何? なんなのこれっ⁈
 どうしてラゼルは俺にこんな事をするの⁈
「トワ、お前経験があるのか? 反応良すぎる…」
 お仕置きみたいに首筋に立てた歯で更に噛みつかれる。
「ああっ! だめぇ! き、気持ち良すぎて、お、おかしく、なるっから…っ」
 言われるまでもなく俺の反応は未成熟なオメガのものじゃない。ラゼルに攻め立てられて体中を駆け巡るのは明らかな快感。
 前回の人生はそこそこの経験をしたくらいで成熟していたとは言えない。それなのに今の俺は前回以上に性的興奮を感じているのだ。
 理由なんかわかってる。
 俺はこんなふうに求められたことなんて無かったのだから。
 欲望を真っ直ぐに向けられる。それも愛してやまない相手から。こんな状況で何食わぬ顔をできるほど俺はすれてない。
「声、大きすぎ。使用人達に気付かれるぞ。俺は構わないが」
「!」
 俺の顎を固定していたラゼルの右手の指が二本口に侵入してきた。
「ふぁっ!」
 突然の事に俺は驚きすぎてラゼルのなすがまま。それに気をよくしたのか初めは遠慮がちだった指の動きはだんだん大胆になっていく。口の奥まで入り込んで縮こまっていた舌を二本の指が摘むように扱きだす。
「っひゃぁっ! ら、らめっ! やめひぇ…っ」
 指の動きに翻弄されて俺は声を上げる。けどまるで何を発声しているか判然としない言葉しか出せない。
 指を入れられ口を閉じることも出来ないから、流れるまま顎へと唾液が滴っていく。
 ぐちゅぐちゅと掻き混ぜられて俺の目に生理的な涙が浮かぶ。
「らぜるっ、おねひゃいっ、こ、んなのむりっ、だはらぁ…!」
 俺は許して欲しくて懇願する。
 ピッタリと俺の背後に身体を押し付けるラゼルから感じる熱。ある一部分は燃え盛るように熱くなって存在を主張している。駄目だ、これ、俺も煽られる…!
「やめて欲しかったらちゃんと質問に答えろ。お前は誰かにこの身体を許したのか?」
「ひょんなこと、ひないっ! おれはらぜるだけ…っ! ら、ぜるひかひらなひ…っ!」
 ちゃんと伝わっただろうか。
 俺はほとんど熱に浮かされたように必死に言い募る。指が入ったままで呂律の回らない口ではうまく言葉を紡げなかったけど。
「未経験でこれか。お前を躾けたらさぞ凄いことになりそうだな」
 更に激しく指が舌を蹂躙する。腰あたりにラゼルの熱を押し付けられ、もうまともに何も考えられない。
「やだぁ、もぅ、虐めなひでぇ」
「優しくされたいのか?」
 俺は必死に首を縦に振る。
「仕方ないな」
 ラゼルは俺を解放してくれた。
 俺はずりずりと壁伝いにその場にうずくまる。ラゼルの攻勢にさらされた身体は力が抜け切ってしまっていた。
 ラゼルもしゃがみ込み、俺が寄りかかる壁に片手をついて俺をまた壁との間に閉じ込めた。
「ラ、ゼル…」
「こんな顔して…」
 間近に獰猛な顔のラゼル。いつものすました顔が影を潜める。俺のフェロモンに煽られて余裕がなくなっている? 俺に欲情しているの? それは本心?
 前回の俺では崩すことのできなかったラゼルの理性を奪う、夢のような現実に全身が歓喜で打ち震えたのだけれど。
 次の一瞬でそれは霧散した。
「この顔を他の奴に見せる前にここでお前を俺の番いにしてしまおうか。そうすればこの顔は俺だけのものになる」
 酷薄さを滲ませた声で呟くラゼルに愕然とする。
 何、言ってるの?
 番いにするって。
「ラゼル、正気なの?」
 全身がぶるぶる震えた。
 怒りで。
 あれほど望んでいた番いという特別な繋がり。前回それを与えてくれなかったのはラゼルだ。
 それなのに今度はそれをちらつかせてまた俺を翻弄しようとするの?
 勝手すぎる。
「俺の事、なんだと思ってるの…?」
 関係を壊したのは俺だ。だけどおもちゃみたいに嬲られる謂れなんかない。
「トワ…?」
「俺に触れるなっ!」
 伸ばしてきた手を払いのける。
「どうした突然」
「煩い。触るな」
 一気に冷めた。
 オメガを支配したいというアルファの本能かもしれない。強者の立場を知らしめるように自分を拒絶する奢ったオメガを力尽くでひざまづかせて屈服させて。子供を産ませて自分の種をこの世に遺して。
 そうやって俺に子供を産ませるのだ。
 俺にロゼアラを産ませて、俺はロゼアラに殺される。
「ラゼルは俺にまた死ねって言ってるの…? ロゼアラ…あの子にまた罪を背負わせるの…っ⁈」
「トワ? 何を言っている」
 ラゼルは俺の豹変に唖然としている。
 けど俺は構わず睨みつけた。
 俺が死んだ事はラゼルに無関係だ。ラゼルとの事をロゼアラに絡ませてしまった俺の自業自得。だからラゼルを咎める権利も資格もない。更に言えば今現在のラゼルには関わりのない話。それはわかっている。けど俺の怒りに触れた。
「帰る。付き添いも帰りの馬車も要らない。付いてくるな」
 衣服を整えるのもそこそこにラゼルの部屋から飛び出した。
 長い廊下を抜けて、悲劇の記憶立ちこめるベルン家をその勢いのまま俺は一人で後にした。


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